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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 風は運ぶ…。
 あの人の歌声を…。

 立ち寄ったバーに一人の歌姫がいた。
 赤い髪と瞳の女性が気だるげにピアノを弾きながらハスキーな声で囁くように歌っている。
 古い古いJAZZ。
「夢の中でなら貴方と会える
 抱き締められるでしょう」
 そう歌う声…。たしか『I'll see you in my dreams』という曲だ。
「昔は私のものだった唇
 優しい視線
 輝く瞳が今宵
 私を導く」
 誰を思い浮かべているのか、彼女の瞳は空を泳ぐ。
 私はバーテンに声をかけ、彼女の好きな酒を聞き出すとそれを頼んだ。
「夢の中でなら貴方と会える…」
 歌い終わった彼女の前にグラスを差し出す。
 彼女の瞳は私を見ない。ただ、誰かをみつめ、グラスを取った。

 飲み干すと、彼女はまたピアノに向かう。携帯を取りだして何処かへ電話をかけ、そのままそれをピアノの上に置き歌いはじめる。
「青い月よ
 何をしていたかわかるだろう
 心から愛する人のため
 捧げた祈りが聞こえたはず」

 電話の向こうに語りかけるように歌われる曲は…『Blue moon』。
 彼女の曲はすべて…電話の向こうの誰かに捧げられているのだろうと思う。
 けれど…私は知っている。その電話は誰にもかけられていないことを。

 私は店を出て冷たい風の吹く町を歩く。
 風は運ぶ、あの人の歌声を…。
 歌姫の届けられぬ想いを…。
 彼女の想いは悲しい。

 私はタバコに火を点けた。

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 彼は夢を見る。
 大きな身体を横たえて眠る時のことを。
 大きなその身体で横になって眠ると、あっという間に捕食者の餌食となってしまう。
 だから彼はいつも立ったまま眠る。短い仮眠を何度も繰り返して、彼は生きている。
 横になって思い切り寝たいと思いながら、短い時間に夢を見る。
 彼が横たわって眠る時はきっと、死ぬ時、なのだろう。

 彼は夢を見る。
 横たわって眠りたいと夢を見ている彼と同属の彼は、大海原を泳いで渡りたい、と夢を見る。
 その大きくて重たい身体は水に入ると沈んでしまう。
 だから、水飲み場で水を飲む時でさえ足元には細心の注意が必要だ。
 足場が崩れれば彼は溺れて死んでしまうのだから。
 彼が泳ぐ時、それは…いつの事だろう。

 彼は夢を見る。
 大海原を泳ぎたいと夢を見ている彼と同属の彼は、大空を飛びたい、と夢を見る。
 大きくて重たい身体が飛べるわけもないのに。
 大きくて愚鈍な彼は大空には敵がいないことを知っている。

 長い年月をかけて…彼らは泳ぎ、飛ぶことができるようになる。何千年もの時間をかけて…。

 彼は…眠る。



 ああ、雨だね。傘、いる?

 窓の外を見て、あなたが言う。私は、帰ろうとしているところ。
 結局言えなかった、言葉。
 それを言うために、ここに来たのに、いつもと同じようにコーヒーを飲んで、タバコを2本…特に実もない会話をして…私は、いつもと同じように、2時間だけの逢瀬を楽しんで…。
 私も玄関から外を見る。照っていた日が翳って、少し肌寒い。

 あなたの上着を貸してください。

 私は頼む。傘よりも、上着が欲しい、と。

 あなたの匂いに包まれて、雨に打たれて歩きたいのです。

 私の願いに、あなたは苦笑して、それでも、自分が着ていたジャケットを脱いで貸してくれる。

どぉ? あったかい?

 おどけたように聞くあなたをいつまでも見ていたかったけど。私には限られた時間しか与えられていないから。

 あたたかい、です。

 私は小さく頷いて。玄関を出る。あなたは見送らない。それが、私とあなたの約束だから。
でも、今日くらい、見送って欲しかった…ねえ、あなた、知っているでしょう?

 ジャケット返すの、いつでもいいから。

 玄関のドア越しにあなたの声。
 ああ、やっぱり知っているのね。私がもう、ここには来ない、ということ。
 いつも通ったドアに凭れて、私はあなたの匂いに包まれて、泣いた。



僕の部屋を飾ろう。

窓辺には紅くて長いリボンを

本棚の前には漆黒の紐を

ソファには大きな大きな人形を

ベッドシーツは紅に染めよう

君の

芳しい香りで

部屋を満たそう

悲鳴をBGMに…

甘い甘い血の香りに酔いながら…



 月には一匹の龍が棲んでいました。

 そこには龍しかいなかったので、龍は、月を食べて生きていました。

 龍は月を食べ続け、月はどんどん痩せて行きました。

 それでも、龍はそれしかすることがなかったので、食べ続け、ある日、月はなくなってしまいました。

 月がなくなると、龍は自分の居場所がなくて、自分の存在がなくなってゆくのを感じました。

 存在をなくした龍が嘆いて涙を流すと、その涙が小さな月になりました。

 どんどん涙を流すと、月はどんどん大きくなり、昔、龍の棲んでいたのと同じ大きさになりました。

 泣きすぎておなかの減った龍はまた月を食べ始めました。



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夏風亭心太


 酒、煙草が好き。
 猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
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