くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
Category:最遊記
貴方の顔に見惚れていました。
貴方が扱う武器の鎖と戯れるような、まるで舞いのような動きに…。
敵を屠る貴方の横顔に時折浮かぶ笑みには一体どんな意味があるのでしょう。
敵の血に塗れ、壮絶な笑みを浮かべる貴方は、さしずめ修羅のようで…。
目が、離せなくなります。
「おい、大丈夫か?」
心配そうに僕の顔を覗き込む貴方は…誰にも見せないような子供染みた表情で…僕はその顔からそっと目を背けました。
「はい、大丈夫です」
僕が貴方に会った時にはすでに修羅の道に落ちていたから。
貴方も一緒に落ちてやる、とそう言いましたね。
一緒に旅をしてたくさんの敵を屠り…貴方はいつでも僕よりもたくさんの敵を屠ってきました。
貴方の笑みの意味を、僕は知っています。
貴方が僕よりもたくさんの敵を屠ることで約束を違えず、修羅に近づくことが出来ていることを喜んでいる笑みなのだと…。
けれど…貴方は勘違いをしている。
僕が修羅であるのは…敵意もない人々を屠ったせい。
貴方が僕らの前に立ちはだかる敵を何人屠ろうとも、一人でそのすべてに立ち向かい、すべての命を屠ってしまうことが出来たとしても…。
貴方は、僕と同じ修羅にはなれないのですよ?
それでも…少し…守られているという気持ちが嬉しいから…僕は何も言えません。
ずるいでしょうか?
修羅に落ちた時、もう二度と手にすることはないと思っていた感情を、僕は持て余しているのかもしれません。
もう少しだけ…僕はずるいままでいてもいいですか?
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Category:最遊記
薄水色の空に白い月が出ていた。
夜に忘れられたそれは酷く寂しそうに見えた。
僕もまた、何かに忘れられて、一人、ここで生きている。
いや、ここで生きることすら出来ず、死すら望めず、ただ、漂っている。
それでも…
月はやがて、夜の空に帰る。
夜輝く月の影である真昼の月。
僕には帰る場所はない。
僕には影はなく、誰かの影でもない。
真昼の月は寂しそうだけれど、僕は羨ましかった。
帰る場所のある月が。
寂しそうに見える月が。
帰る場所など最初からなかった僕には、それこそ、最初からなかった感情(もの)。
寂しいと思う心さえ、僕は、真昼の月を見上げるまで知らなかった。
僕は、自分が生きているのだと言うことさえ、ずっとずっと知らなかった。
ずっと昔に僕が綴った文章。
薄水色の空の白い月を見上げ、ふと思い出す。
あの時の月は、君だったのだ、と。
そして、今、ここで僕を見下ろす白い月は、僕なのだ、と。
僕は、夜輝く君という月の影だったのだ。
けれど…今の僕に帰るべき、君という月は失われてしまった。
空を見上げる。
夜に忘れられた寂しげな月は、やっぱり寂しい僕を見下ろして、僕を嘆いてくれている。
Category:最遊記
「エロ河童!」
「んだとぉ、このちび猿!」
あぁ、またですねぇ。そんなことを思いながら八戒は出来たてのラーメンを持って部屋の戸を開ける。
「今度は一体なんなんですか?」
賑やかな二人は八戒が入ってきたことにも気付かない様子で、喧嘩を続けている。が、すぐに悟空はラーメンの匂いに気付いて喧嘩はうやむやになるだろうことは予想がつくので、彼は気にも留めなかったのだが…。
「あつっ!」
「あ…」
悟空をからかいながら後ろ向きに歩いていた悟浄が八戒にぶつかって、八戒は持っていた4人分のラーメンを自分自身に浴びせることになってしまった。
「八戒! 大丈夫か?!」
八戒の心配かラーメンの心配かわからないような顔で悟空がかけてくる。
「悪ぃ、大丈夫か、八戒?」
悟浄は八戒の手を取り、やけどをしていないか、と聞いてくる。
「大体、悟浄がっ!」
再び喧嘩が始まりそうなのを見て取って、八戒はそんな二人を宥めにかかった。
「まぁまぁ、二人とも。僕は大丈夫です。でも、染みになると困るので、着替えて服を洗ってきますね。その間に、ここの片付け、お願いできます?」
幸いに壊れなかったどんぶりを拾い上げ、八戒は二人に向かってにっこりと微笑むと部屋を後にした。
「八戒、怒ってた?」
言われるままに片付け始めた悟空は誰にともなく、聞く。
「ああ、あれは、怒ってたな」
我関せず、で煙草を吸いながら新聞を読んでいる三蔵の言葉に、悟空は少し凹む。
「このまんま、飯、作ってもらえなかったらどうしよう…」
悟空の呟きに悟浄は吹き出した。
「おめ~は食べることしか考えらんねぇのかよ。ま、仕方ねぇかぁ、脳みそまで胃袋なお猿ちゃんじゃぁ、なぁ」
「大体、悟浄が悪いんだろ? いっつも俺を、猿猿言いやがって! 俺は猿じゃねぇ、ってんのがわかんねのかよ! この、ゴキブリ河童!」
集めていた麺を床に叩きつけて、悟空が叫んだ。
「んだとぉ、もういっぺん言ってみやがれ、このバカ猿!」
「あ~ぁ、何度でも言ってやるよ! エロ河童! ゴキブリ河童! アホ河童!!」
また始まっているようだ、と八戒は新しいラーメンを持ってため息をつく。三蔵も止めればいいのに、とそちらにも少し腹が立った。
戸を開けて八戒はその場に固まる。
片付けるように言っておいた、先ほどこぼしたラーメンはそのまま、というよりも、エキサイトして踏みにじられたのか、余計に散らかってひどい有様になっている。
「あ、八戒!」
悟空がいち早く八戒に気付き、その手に新しいラーメンがあることを見て、嬉しそうに笑う。それへ、八戒も極上の笑みを返した。
「僕、片付けてください、とお願いしませんでしたっけ?」
「だって…悟浄が…」
「悟空が悪ぃんだろ…」
ラーメンどんぶりが乗ったおぼんを持ったまま、二人に向かって歩いてくる八戒。その迫力におされたかのようにしゃがみこんでその床に散らばったラーメンだったものを拾おうとする悟浄と悟空。
「あっちぃ!!」
「あ、悟浄、すみませんねぇ、手が滑ってしまいました。やけど、しませんでした?」
しゃがみこんだ悟浄の頭にラーメンどんぶりが被せられ、その糸底の上にしっかりと置かれた八戒の手に、そしてその笑顔に、今まで無関心だった三蔵までが、掃除に加わった。
Category:最遊記
紅い男が呼ばれた声に反応して俺は立ち上がった。
そこにいたのは…そして…その後には…………。
「…れん……捲簾?」
急に背後から肩を叩かれ振り返る。
「どこにいたんです? 随分探しましたよ?」
天蓬がいた。
「……どこで飲んだんです? 討伐すんだばかりじゃないですか…。それに、それは?」
言われて初めて、俺は手に紅い男のカップを持ったままであったことに気付いた。
「なぁ…天蓬……上……」
そこには満開の桜があった。下界の桜はやはり、天界のそれより綺麗だと思う。
「ああ…綺麗、ですね…」
男に貰った煙草を咥え、煙を吐き出しながら樹の幹に手を置く。
「その煙草…見ないものですね…」
「なぁ、この樹って、どんくれぇ生えてんのかな? どんくれぇ、生きるのかな…」
天蓬の言葉は無視して俺はその樹の肌を撫でた。
「これくらいの大きさだと…およそ500年~600年と言ったところ、ですかねぇ…。僕にも一本くださいよ、煙草」
差し出される天蓬の手に煙草を一本渡し、手に持ったままだったカップに入っていた酒を飲み干した。
「何か、あったんですか?」
「あった…のか、なかった、のか…」
「なんですそれ?」
「桜も100年も生きれば精霊でも宿るのかね…。夢を、見たんだよ、たぶん、な。なぁ、天蓬…いつか、みんなでこの桜の下で花見でもしてぇ、な…」
そう、みんなで……。
「彼らと、ですか? 今度討伐の時はお酒、隠し持って来ます?」
天蓬が後を振り返ると丘の下に俺たちの仲間がいた、天界西方軍第一小隊の仲間が。
「あいつら、もいいけどな…。金蝉と悟空とお前と、俺で、さ…」
「ああ…いいですね…それ…」
「悟空が…酒でも飲めるぐれぇ大きくなったら…一緒に…」
「じゃ、早く下界の混乱を収めないと、ですね。そのためにも、今は帰りますよ、捲簾」
踵を返して丘を降りようとする天蓬の背中に、ちょっと待って、と声をかけて俺はその樹に登り始めた。
「何してるんです、捲簾?」
立ち止まって俺を見上げる天蓬に俺は笑って見せた。
「この樹だって目印つけとこうと思ってさ」
樹の上に着き、適当な枝に持って来たカップを引っ掛けて降りてきた。
「下界の桜、という意味じゃなかったんですか?」
俺の行動に笑いを隠せない声色で聞く天蓬に。
「この樹、がいいんだよ…この桜、がな…」
もう一度樹の肌を撫で、俺は仲間と合流した。
「なぜ笑う」
傲潤が俺に刃を振りかざしながら聞く。
「そう決めてたからだ」
最後は笑って逝こう、と。
あの紅い男に貰った煙草の最後の一本の香りが、血の匂いに混ざってそれでも濃く俺に焼き着いていた。
あいつの背後に見たのは…確かに天蓬で…遠目にはちゃんと金蝉も…成長した悟空も、いたんだ。
それがどれだけ先のことなのか、わからねぇけど…。
来世もあいつらと一緒なら……あいつが俺なら………。
それも、悪くねぇ…。
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プロフィール
夏風亭心太
酒、煙草が好き。
猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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