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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 店のオープンの時間。

 小さな看板に電気をつけ、カウンターの中で煙草を片手に自ら作ったレッド・アイを飲む。

 誰か来るのか誰も来ないのか…。どこから来るのか、いつの時代なのか…店が営業してる間はドアの向こうに繋がる世界に俺は出ることは出来ない。

 からん、とドアベルが軽い音を立て、ドアが開いた。

 いらっしゃいま………って、八戒かよ。

 ご挨拶ですね、貴方が珍しく定職に就いたと言うからわざわざ様子を見に来たと言うのに。少し心外な顔をして見せた八戒はそれをすぐに隠して、小さなカウンターの一番奥の席に座った。

 目の前にコースターを滑らせ、俺はシェーカーを手に取り、早速一杯作ってサーブした。

 マルガリータ? あまりにベタじゃありません? 苦笑しながら、八戒はグラスを取る。
 このカクテルの製作者の亡くなった恋人の名前、なんですよね。悲恋のカクテル、ですよねぇ。悲恋、というにはさっぱりと口当たりの良いカクテルですけど。

 ショートカクテルの名の通り、八戒はすぐにそれを飲み干すと、次は何を用意してくださるんです? と俺を挑発でもするかのようにまっすぐに見つめる。

 またベタだと言われるかもしんねぇけど…今度は、八戒の瞳の色のカクテルを用意してみた。

 これは? 酒の色と同じ瞳が少し伺うような表情でグラスの中身を見る。

 モッキン・バード、ってカクテルだ。綺麗な色だろ?

 そうですね。グラスを取り、ゆっくりと舐めるように飲み、八戒はニッコリと微笑んだ。
 すっきりと飲み心地の良いカクテルですね。

 ああ、中々いいだろ?

 貴方も何か飲んでいます? 美味しそうに飲み干し、気に入ったらしく同じものを、という八戒にもう一度モッキン・バードを作ると、自分用に冷蔵庫から取り出した冷えたトマトジュースとビールをグラスに注ぐ。
 レッド・アイ? 二日酔いなんですか、悟浄? 二日酔いの朝に迎え酒代わりに飲む事もあるそのカクテルに八戒が眉を顰める。

 いんや。バーテンが客より先に酔っ払うわけにはいかねぇだろ?

 俺が笑って言うと、考えてるんですね、それなりに。ともう一度微笑む。

 それなりに、は余計だっての。あ、そうだ、八戒、お前に飲ませてぇ酒、あんだけど。

 なんです? 訝しげに小首を傾げる八戒に俺は、綺麗に澄んだグリーンの酒が入ったビンを取りだして見せた。
 アブサン、ですか? なんでまた…。苦笑する八戒に俺は真剣な顔で答えていた。

 いや、お前さ、酔い潰れることってねぇじゃん。いっぺん見てみてぇんだよな、お前が潰れるトコ。

 僕を潰してどうするつもりですか。襲わないでくださいよ? かなり真剣に言われて、俺は思わず飲んでた酒を噴き出す。

 お前襲ったって楽しくねぇ、っての。まぁ、酔い潰れたら、顔に落書きしてやんよ。

 いいんですか? そんなこと言って。というか、僕を潰しても仕方ないでしょう? お店の邪魔になるじゃないですか。いい時間だというのに、自分以外に客が来ないことに今更ながらに気付いて、八戒は少しソワソワとしだす。

 いいんだよ。この店は一晩に一人の客しか受け付けねぇ。落ち着け、っての。

 それで…採算は取れるんですか? 心配そうに聞いてくる八戒に俺は肩を竦めて見せた。

 さぁ? 俺は雇われバーテンだしな~。オーナーがそれでいい、つってんだからいいんじゃねぇの? なんでも、来たいと思ってる客と招待したいと思ってるバーテンの心がシンクロした時だけ、バーのドアがその客の前で開くとかなんとか、わけわかんねぇこと言ってたしなぁ、オーナー。

 悟浄は僕を招待したかったんですか? 最初のお客として。意外です、と心底驚いたような表情で言う八戒に俺は苦笑した。

 どうだろ~なぁ。最初の客は、やっぱかわいこちゃんが良かったんだけどよ。お前は様子を見に来たいと思ってて、オーナーがお前を招きたかったんじゃねぇのかな?

 まぁ、そんなところでしょうねぇ。八戒も俺に釣られたように苦笑する。

 んで、ど~する? 飲んでみるか、アブサン。

 その綺麗な緑はまるであいつを誘うようにビンの中で揺れていた。
 そうですね、いただきましょうか。ニッコリと微笑む八戒の目の前に、それと氷だけを専用のグラスに入れて差し出す。
 ちょっと、悟浄…。いくらなんでもこれは…。アブサンをロックで飲むのは無理ですよ…。アルコール度数、どれだけか知っているんですか? 焦ったような八戒を少し楽しんでからアブサンスプーンと呼ばれる独特な形のスプーンに角砂糖を用意する。

 アルコール度数は…最高の奴だな、これ。89%だってさ。

 ビンを見ながら答え、角砂糖にアブサンを垂らしてグラスの上にアブサンスプーンを置くと、火を点けた。
 薄暗い店内で青い炎が揺れる。
 旅の間、何度も火の傍で過ごしましたよねぇ。 八戒が遠くを見るように炎を眺める。
 また、旅がしたくなりません? そう言って八戒はクスリと笑い、俺が用意したミネラルウォーターを燃える砂糖にかけると火を消して、それを落としこむと混ぜる。
 ゆっくりと白く濁ってゆく酒を二人でただ、眺めていた。


 酒と水と砂糖と炎。その4つのものが混ざったとき、その強い酒は得も言われぬ風味を増す。
 俺ら4人がそうだったように……。



 最初の客、そして、俺の選んだ酒…すべてはあの旅の日々の追憶なのかもしれない。











・マルガリータ テキーラ30ml、コアントロー15ml、フレッシュレモンジュース15ml レモンで湿らせたグラスの縁をソルトでスノースタイルに。 シェーク アルコール度数20

・モッキン・バード テキーラ30ml、グリーン・ペパーミント15ml、ライムジュース15ml シェーク アルコール度数26.3
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 大きな建物の狭間の路地裏。
 なんでそんなとこに入り込んだのかわからねぇけど、気がつくと俺はそこを歩いてた。
 突き当たりに黒く塗られたドアがあった。
 そこに深紅の文字で「Crimson Moon」と書いてある。
 吸い込まれるように、俺はそこに入っていた。

「いらっしゃいませ、沙 悟浄さま。お待ちしていました」

 中はカウンターだけの小さなバーだった。
 黒を基調にした室内に薄暗い間接照明の落ち着いた店内のバーカウンターの中で一人の人物がグラスを磨いていた。

「なんで俺の名前を?」

 磨いていたグラスから顔を上げ、にっこりと微笑むバーテンの身長は悟空ぐらい、眼鏡をかけた小太り、ショートヘアの女だった。

「貴方のために開いたドアですから」

 カウンターに灰皿とコースターを置かれ、俺はバーテンの前に座った。

「どういうことよ?」

 バーテンは曖昧に微笑むと一杯のカクテルを俺の前に置いた。
 その赤い液体を俺は黙って眺める。

「レッド・アイ?」
「いえ、レッド・バードです。悟浄さんにレッド・アイでは軽すぎるでしょう?」

 俺がそれに口をつけるのを待って、バーテンはいきなり切り出す。

「ここのバーテンをしてみる気はありませんか? このバーは時と空間の狭間にある店です。来たいと思う人と招きたいと願うバーテンの思いがシンクロした時にだけオープンするんですよ」
「俺は、来たいなんて思ってなかったけどな…」

 招きたいバーテンの思いに誘われたか?

「旅が終わって、昔の生活に戻り…旅が忘れられないでいる。ぬるま湯の中で惰眠を貪るような生活から抜け出したいと思っている。違いますか?」

 なんで知ってるんだよ、こいつは。
 また旅をしたい、とは思ってねぇけど、戻ったって同じ生活をするしか脳のねぇ俺は結局夜の街で酒と博打に溺れる毎日を送っていた。

「そんな思いが貴方をここに招いたんです。夜の闇がお好みならば、その中で今までの生活を変えたいのならば、どうでしょう? 二日酔いを繰り返す毎日から離れて…」

 話しながらバーテンはシェーカーを振る。

「アイ・オープナー、です。惰眠を貪るだけの生き方から目覚めませんか?」

 俺は出されたグラスを一気に煽る。
 前の酒よりも強いそれに咽喉を焼かれる。
 俺は肯いて、ここ「Crimson Moon」のバーテンになった。




・レッド・アイ  ビール1/2グラス、トマトジュース1/2グラス ステア  アルコール度数 2

・レッド・バード ウォッカ45ml、トマトジュース60ml、ビール適量 ステア アルコール度数 13

・アイ・オープナー ホワイト・ラム30ml、アブサン2ダッシュ、オレンジキュラソー2ダッシュ、アマレット2ダッシュ、砂糖1スプーン、卵黄1個分 シェーク アルコール度数 34.3









 











 最遊記の沙悟浄を主人公に、彼が旅後にバーテンになったとの設定で子話を書きたくなりました。

 時と空間の狭間にあるバー。客は多種多様、一回につき一名サマご案内。

 来てみたいという方、来たら面白いのにと思われるキャラクターのリクエスト(最遊記以外でも可。ただし、おいらは知ってる作品数は少なく、かなりマニアックなものが多いのでリクエストに答えられないこと多し)気軽にコメントください。

 あと、知りたいカクテルのレシピとかのリクエストでもOKです。

 細々と続けて行きたいので、良かったら協力してください。

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夏風亭心太


 酒、煙草が好き。
 猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
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 こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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