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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 いい月の夜だった。
 中秋の名月、って言うのか、こういうの。

 近くに街はなく、野宿。
 灯りは野営のための焚き火だけ。
 そのせいか、月がいつもより輝いて見える。

 まぁ、暑いから風邪引く心配もねぇし、この満月もいい。

 猿は高鼾。その隣で寝苦しそうに三蔵が寝返りを打って、それでも眠っている。
 一日の運転で野営の時の飯作り。そして明日も運転な八戒は、無理矢理寝かせた。

 静かでいい夜だった。悟空の鼾さえ聞こえなきゃ、だけど。

 手元にはいつものカップに八戒が作って火の傍に置いておいてくれた珈琲。

 野営の寝ずの番はいつしか俺の役目になってた。けど、こんな月の夜は得した気分になるんだよな。
 単純っちゃ単純だけど。

 けど…こんな月なら、酒でも飲みながら愛でてぇもんだぜ。

「悟浄?」

 背後から声。
 八戒が起き上がって俺を見てた。

「八戒、いいから寝てろっての」
「この月、独り占めする気ですか?」

 笑いながら俺の隣に移動してくる。
 手元の荷物を漁って、出したのは、酒。

「どうですか? 一杯」

 悪戯っ子のように笑う八戒に俺は、いいねぇ、とカップの珈琲を飲み干すと空のカップを差し出した。
 なみなみと注がれる酒。その瓶を取って俺も八戒のカップに酒を注ぐ。

「中秋の名月に」
「僕たちの旅に」

 俺たちは風流さには程遠いアルミのカップで乾杯をした。

 風情を求めるより、ずっと俺たちらしい月見だった。


 悟空が酒飲める歳になったら、四人でこうやって酒を飲めたらいいな、とふとそんなことを思った。





悟浄ブログより転載

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