くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
Category:最遊記
やっぱ、この街は落ち着くなぁ。
別に、街に執着してたわけじゃねぇけど。
目的達成したら、当然、三蔵サマは帰んないと、なわけだし。
なんとなく、一緒に帰って来ちまった。
旅の間、あちこちの街でキレーなおねいちゃんと懇ろにもなったし、美味い酒出す店もあったし、カモの多い賭場もあったけど。
ここが、落ち着くんだよな…。
と、馴染みのおねいちゃんは…。
いねぇのか…。
あれ?
こんな場所には不似合いな……ガキ?
なんでだ?
紅い髪?
あっちのガキは……目が紅ぇ…
「悟浄、待ってたわ。貴方の子、よ?」
へ?
馴染みのおねいちゃんが…何人もガキ連れて……。
え?
えぇ~~!
全部、俺の、子?
待ってくれ!
ちょっと……
待ってくれ~~~!!
** *** **
「悟浄? 大丈夫ですか?」
八戒の声で目が覚める。
飛び起きると目の前にコップに入った水が差し出された。
「随分とうなされてましたけど…。どんな夢、見たんです?」
言葉を濁して受け取った水を飲む俺を見つめる翠の瞳が幸せそうに笑って、臨月とも思える大きな腹をゆっくりと摩っていた。
** *** **
慌てて飛び起きる。
炬燵でうたた寝したらしい。
横で八戒が美味そうに蜜柑を食ってた。
「どうしました、悟浄? 随分とうなされてたみたいですけど?」
言いつつも、忙しく蜜柑を剥く手は止まらない。
「いや…俺らの住んでた街に戻ったら…俺のガキだってのが何人も待っててよ…」
「あはは。ありえそうですよね、それ」
笑いながら何個目かわからない蜜柑を頬張る八戒に…二重の夢の二つ目を思い出した。
「八戒…まさか?」
「何が、まさか、なんです?」
「いや…妊娠すると酸っぱいもんが欲しくなるって……」
「僕、男ですよ? 妊娠なんてするわけないじゃないですか。ただ、この蜜柑、すごく美味しくて」
そう言って一房差し出して来たのを、そのまま口に咥えて噛んだ。
甘くて酸っぱくて、美味い。
「もう一個食べます?」
差し出される蜜柑ごと、その白い指に軽く歯を立てた。
今の俺にはこいつがいればいい。
ガキが出来る心配もねぇし…な…。
蜜柑の味のキスを、した。
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Category:最遊記
『HAPPY BAD BIRTHDAY。
生まれた事に祝福と罪を。
HAPPY BAD BIRTHDAY。
生きてることは最悪だけど。』
買い出しに出かけた街の中で、両親の腕にぶら下がるようにして歩いてるガキ。まだ、3歳にもなってねぇんだろうな。
それを、なんとなく見送る。
「どう、しました?」
すっかり足を止めてしまってたんだろう。二三歩前を歩いてた八戒が振り返って俺の肩に手を置いた。
「あ…いや…。なんでもねぇよ」
何かを吹っ切ろうとして勢い良く、足を前に出してみるが、あの幸せそうな家族が気になって振り返ってしまう。
「ねぇ、悟浄?」
俺と並んでその家族を見送って、八戒が言う。
「幸せそう、でしたね、あの家族。羨ましい、ですか?」
「べっつにぃ…」
今度こそ歩きだそうとした俺を八戒が引き止めた。
「前に貴方、自分は生まれてきて良かったのか、って聞いたことありましたよね? 自分が生まれたせいで両親も、育ての母親も死なせてしまった、と」
なんでそんなこと、今頃言い出すんだよ、こいつは…。
両親もアノヒトも俺がいたことを後悔してるんじゃないか、ずっとそう思ってた。なんで、俺を産んだんだ、って…どこかで恨んでいたのかもしれない、産みの親を。なんで俺を引き取ったんだよ、って恨んでたかもしれない、アノヒトを。
だから…幸せそうな家族は…羨ましくて、恨めしい。
けどさ…だったら…こいつらだってかわらない、か…。
「キリスト教では…」
いきなり八戒が話し始める。
「堕胎は罪、なんです。悟浄のご両親がクリスチャンではなかったのでしょう? 普通、産みたくなければ、そういう方法もあったんじゃないですか? ほら…」
八戒が指を差した方に、妊婦がいた。
大きなお腹を抱えて、でも幸せそうに。自分のそのデカい腹に笑みを浮かべて語りかけている。
「貴方のお母さんもきっと、ああやって貴方を愛してくれてたんだと思いますよ? 十月十日は長いです。気持ちの浮き沈みもあるでしょう。それでも命を育み、愛してくれたから、今の貴方があるんです。僕も…三蔵も…。みんな、そう、なんですよ? だから、誕生日は生まれておめでとうの日であると同時に…産んでくれてありがとう、の日でもあるんです」
翡翠の瞳がまっすぐに俺を見る。
「それに…家族なら、いるじゃないですか。三蔵や悟空や…僕も。もう、家族みたいなもの、でしょう? 家族って、血の繋がりだけじゃないと思うんです。一緒に過ごした時間とその重みが、家族を作るんです。だから…ね?」
すっ、と視線を伏せ、胸の前で両手を組むと、八戒は言葉を続けた。
「貴方を育んでくれたご両親に感謝を。僕たちと家族より強い絆で繋がれた、悟浄の生まれた日に…。悟浄に祝福を…」
照れくさいな、と思いつつ…俺は八戒のその言葉に…少しだけ素直に、今日のこの日、自分の誕生日って日を楽しんでみようと思った。
「んじゃ、小煩ぇ親父と賑やかな弟の待つ宿に戻りますか」
「なんですかそれ、本人たちに言っちゃダメですよ」
歩きだした俺に並んで、八戒が笑いながら言った。
「ところで、三蔵が父親で悟空が弟なら…僕は何なんですか?」
「え? おふくろ、だろ?」
にやり、と笑って答えてやると、八戒はひどく嫌そうな顔をした。
「何? 三蔵と夫婦じゃイヤなのか?」
「いえ…もう、三蔵とはそんな関係なんだろうな、とは思いますけどね。野球のバッテリー的な感覚で、夫婦なのじゃないかな、と。僕が嫌なのは…」
なぜかまっすぐに俺の顔を見た。
「貴方みたいな不良息子が居ると思うと…」
ため息を吐かれる。
「そっちかよ…」
「ええ、そっちです」
きっぱりと言い切った後、それは楽しそうに笑うから、背中を思いきり叩いてやった。
また、家族連れとすれ違う。
その光景が少し眩しくて……。
真ん中で父親の腕にぶら下がってるガキが……幼い頃の自分に見えて。
でも、もう、その光景は羨ましいものではなかった。
俺にも、家族はあるんだ。
「悟浄、誕生日、おめでとうございます」
ちょっとだけ、涙が、零れた。
『HAPPY HAPPY BIRTHDAY。
誰かが一緒にいてくれるなら。
HAPPY HAPPY BIRTHDAY。
生きてて良かったと。
生まれて良かったと。』
Category:NoiRouge
またこの時期、か…。
気分が沈む。
仕方ねぇよな、こればっかは。
「どうしたよ?」
同居してる奴が聞いて来るのにただ、笑って見せる。
いつものように撫でられるけど、嬉しいとは感じねぇ。
「よし、これから出かけるぞ!」
気を使ってくれてんのはわかる。
出かける気分じゃなかったけど、俺は付き合うことに、した。
出かける、つっても行先はいつもの酒場。
大して大きくもない街で、野郎が二人で行くとこなんざ、限られる。
結局いつもの酒場でいつもの席に落ち着くしかねぇ。
「あら、悟浄。今日も彼氏と一緒?」
馴染みのオンナが俺たちの間に割って入る。
「彼氏ってなんだよ」
いつもの会話。オンナたちは俺や捲簾を構って遊びたいだけなのだ。
「ねぇ悟浄? 明日、暇? あたしと遊ばない?」
他の女が声をかけてくる。
「あら、悟浄は明日は私と遊ぶの。ねぇ、いいでしょう?」
「悟浄、お誕生日のプレゼント、何か欲しいもの、ある?」
オンナたちに取り囲まれた。
その中の一人の腰に手を回す。
「そだな、アンタをちょうだい?」
上目遣いに見上げると、オンナたちは黄色い声を上げた。
オンナって…なんで誕生日なんか気にすんだろ?
祝われたりしたくねぇから黙ってた。
ある日、行為の後、占いするから誕生日教えて? って言われて、深く考えずに答えちまったのが運のつき、だったのかもな…何日か後には酒場で出会うオンナみんなが俺の誕生日知ってて驚いた。
去年はそれで鷭里やオンナたちとバカ騒ぎしたっけ。
一体、何が楽しいんだか…俺にはさっぱりわかんなかった。
翌日は見覚えのねぇ部屋の大きなベッドの上で、二人のオンナと一緒だった。ひどい二日酔いで最悪な朝。
やっぱり、誕生日なんざ、いいこと、ねぇ。
オンナたちに気づかれないようにため息を煙草で隠す。
目の前に置かれたいつもの酒を飲み干して、誤魔化すように笑う。
「悪ぃな。こいつの明日は俺の貸しきりなの」
オンナたちの間から、急に手が伸びてきて、俺の肩を抱き寄せた。
「おい、何すんだっ」
身を捩る俺と離そうとはしない腕。オンナたちの揶揄うような悲鳴。
暫く黄色い悲鳴で俺たちを揶揄っていたオンナたちは、やがて飽きたのか、一人、二人、と傍から離れて行った。
「せっかくの今夜の寝床、ど~してくれんだよ」
オンナの背中を見送りながら、俺は捲簾に悪態をつく。
「それでそのまま、誕生日パーティとやらになだれ込むのか? 望んでもいないくせに」
見透かされてる、と思った。
だから、その顔を見る事もせず、俺は一人、目の前の酒を空にすると席を立った。
** *** **
席を立った紅い髪の男を追いかける。
店を出て行くその背中は、小さく見えて。
すれ違った親子連れを、羨ましそうに、寂しそうに、苦しそうに、悲しそうに…なんとも言えない顔で見送るその横顔に、俺は言ってやる言葉をみつけることができなかった。
「俺、生まれてきて良かったのかな?」
ぼそり、と呟かれる言葉に、俺は黙って隣に並んだ。
「俺が生まれて、両親は死んじまって。アノヒトを壊したのも、俺。兄貴を親殺しの犯罪者にしたのも…。なのにさ、俺はマトモなことなんざ一つもして来なかった。生まれてこなきゃ良かったのにな…」
そんなことない。
言葉で言うのは簡単だけど、言えなかった。
だから、黙ったまま並んで歩く。
「あんたは言わねぇのな、そんなことない、って」
「言ったらその言葉を信じるか、お前は?」
「多分…信じねぇ…な…。そんな事、言われたこともねぇし、言われたいと思ったこともねぇからな…」
それ以上悟浄も俺も何も言わず、帰路を辿った。
「飲み直すか?」
家に着くと俺は返事も待たずに酒の用意をする。家中の酒を集めて、冷蔵庫から肴になりそうなもんを引っ張りだして。
ソファに悟浄を座らせるとグラスを持たせて酒を注いだ。
黙ったままグラスを空ける悟浄。
俺も黙ったまま、グラスを傾ける。
話すことはなかった、から。
この家の古びた時計が日付が変わったことを教える。
「誕生日、おめでとう、悟浄」
言われたくないだろうと思いつつ、俺は一言だけ、言った。
悟浄は、潰れてテーブルに突っ伏して寝ていた、から。
** *** **
あったま痛ぇ…。
ガンガンする頭とぼんやりと焦点のあわない視界。
昨夜、そんなに飲んだっけ?
飲んだ、か…。
オンナに騒がれて、すぐに酒場を出て。
家で飲み直した。
この日がイヤで、忘れたくて…思い出したくなくて。
くしゃり、と頭を撫でられる。
「今日は一日、なんもしたくねぇ…」
俺を撫でる大きな手がぼそり、と呟く。
こいつも飲みすぎたのか、と思うとおかしくて笑ったら、それが頭に響いて思わず顔を顰めた。
「このままダラダラしててもいいんじゃねぇか?」
起き上がろうとした俺の腕を引っ張るその温もりに。
おめでとう、なんて面と向かって言わないこの男の優しさに。
「じゃぁさ、今日はずっと撫でててくんねぇ?」
そう言って、もう一度捲簾の隣に猫のように丸くなった。
こんな…ダラダラとした何もない一日が、俺にとっては一番のプレゼント。
撫でられる心地好さに目を閉じて微睡みの時間に身を委ねた。
Category:最遊記
「悟浄、これ」
差し出されたのは一着の衣装。広げてみると、黒いスーツにマントだった。
「何、これ?」
どう見ても、吸血鬼かなんか、だよな?
クリスマスには早いし、誰か、知り合いの誕生日かなんかだったっけ?
「着てくださいね」
当たり前のように言われる、が…。
「なんで、よ?」
「ハロウィンだから、ですよ」
当たり前のように返された。
なんだ、それ?
聞いた事あるような…ないような…。
「ハロウィン、知りません? 西国のお祭で、もともとはケルト民族のお祭だったと言われています。その後、カソリックの万聖節の前夜祭であることから…」
「いや、別に由来を聞いてるわけじゃねぇんだけど…」
だいいちキリスト教とか、俺、わかんねぇし。つか、宗教とかそういうの、大して気にしちゃいねぇし?
八戒はクリスチャンかもしんねぇけど。
「一体、何すんだよ? どっかで仮装パーティでもすんの?」
「悟空が、ね。一緒に回って欲しい、って言ってるんですよ」
「回る?」
「子供が仮装して、ご近所の戸口を回るんです。トリック・オア・トリート、と言って。そうすると、お菓子を貰えるんですよ」
「悪戯かお菓子か、ねぇ…」
俺はちょっと考える。
「んじゃさ、つきあってやっから、それがすんだら…甘い菓子、くれる?」
「え? いいですけど…。でも悟浄、甘いもの、苦手じゃなかったですっけ?」
きょとんとする八戒に、俺はにやり、と笑った。
「お前っていう甘い菓子を、さ…。俺は…甘い悪戯してやっからよ」
耳元で囁いてやると真っ赤になったその頬に軽く口づけて、俺は渡された衣装に着替えた。
いやぁ、今夜が楽しみだ。
Category:最遊記
「悟浄、これ」
差し出されたのは一着の衣装。広げてみると、黒いスーツにマントだった。
「何、これ?」
どう見ても、吸血鬼かなんか、だよな?
クリスマスには早いし、誰か、知り合いの誕生日かなんかだったっけ?
「着てくださいね」
当たり前のように言われる、が…。
「なんで、よ?」
「ハロウィンだから、ですよ」
当たり前のように返された。
なんだ、それ?
聞いた事あるような…ないような…。
「ハロウィン、知りません? 西国のお祭で、もともとはケルト民族のお祭だったと言われています。その後、カソリックの万聖節の前夜祭であることから…」
「いや、別に由来を聞いてるわけじゃねぇんだけど…」
だいいちキリスト教とか、俺、わかんねぇし。つか、宗教とかそういうの、大して気にしちゃいねぇし?
八戒はクリスチャンかもしんねぇけど。
「一体、何すんだよ? どっかで仮装パーティでもすんの? かわいこちゃん、来る?」
「悟空が、ね。一緒に回って欲しい、って言ってるんですよ」
「回る?」
「子供が仮装して、ご近所の戸口を回るんです。トリック・オア・トリート、と言って。そうすると、お菓子を貰えるんですよ」
「んじゃ、悟空だけでいいんじゃね? つかさ、あいつ、寺の子だろ~が。いいのかよ、キリスト教のお祭なんかに参加しちゃって」
「キリスト教のお祭、というわけでもないんですけどねぇ…。でも、悟空が寺にいることを知っている方も多いですから長安ではなくて、僕たちのいるこの街に来て、と僕がね、誘ったんですよ。いいでしょう、悟浄?」
どこか嬉しそうに言う八戒に。俺は、まぁいいか、と承諾した。
しかし、もともと妖怪の俺らが妖怪の仮装するなんて…なんの冗談なんだが…。
暫くしてやって来た悟空を可愛い狼男に仮装させると、吸血鬼になった俺と魔女になった八戒との3人で街を回った。
こいつらと出逢って、最初のハロウィンのこと、だった。
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プロフィール
夏風亭心太
酒、煙草が好き。
猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
こんな奴ですが、よろしくお願いします。
酒、煙草が好き。
猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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