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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 雨が降ってた。
 日が照ってた。

 通り雨だろうと俺たちは走り続けた。

「なんだよぉ~。晴れてんのに雨降るなんて!」

 隣で悟空が忌々しげに空を見上げる。
 俺も一緒に見上げる。煙草は吸えねぇな、この雨じゃ。
 雨のせいか、前の二人はいつも以上に静かだ。

「こういうの、狐の嫁入り、っつ~んかねぇ…」

 顔に当たる日差しの暖かさと、秋の雨の冷たさ。
 俺は嫌いじゃねぇけどな。

「狐の嫁入り?」

 何を思ったか、悟空が急にきょろきょろと辺りを見回し始めた。

「何、やってんだよ。お前は…」
「だって、結婚式だろ? いっぱい美味いもん、あんだろ? 俺らも混ぜて貰おうぜ!」

 思わず、声が漏れる。
 ハンドルを握りながら、八戒がふきだしたのがわかった。

「悟空。狐の嫁入り、というのは、こうやって晴れているのに雨が降ってる状態を言うんですよ。昔の人はこんなかわった天気の時は、狐が結婚式でも挙げそうだなぁ、って思ったんでしょうね」
「そうそう。それによ、もしホントに狐の婚礼があったとして…料理、期待できると思うか?」

 隣の茶色い頭を小突いてやる。
 恥ずかしかったのか、照れたように、怒ったように悟空が小突き返してきた。
 雨の日は、三蔵が大人しいとそれにつられるように悟空も少し大人しい。
 言い返さない悟空の頭をそのまま撫でてやる。
 雨の日に騒がないのか、俺たちのルール。

「あ、ほら!」

 八戒が空を指差す。




 虹が、出ていた。
 八戒がジープを止める。

「雨、上ったな…」

 俺は空を見上げ、煙草に火を点ける。
 三蔵も煙草を咥えたのを見て、そのまま火を点けてやる。

 俺たちは暫く、そのままその虹を見てた。薄くなって消えてしまうまで。


 そんな、旅の日常。


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 もえるもえるもえる。

 真っ赤な華が一面に咲いている。
 それは、地獄の業火にも、天へ助けを求めて伸ばす人の手のようにも見える。

 有毒なその華の真ん中に立つのは、その華と同じ色を持った、ヒト。

 伸ばされた手を取って、並ぶ。

「ほら、綺麗、だろ?」

 貴方は笑う。

「街に入る途中で見つけてさ。見せてやろうと思って」

 この華、有毒なんですよ? 
 思わず出かけた言葉を飲み込んだ。

「お前、この色好きだって言ってたから」

 貴方は好きじゃないはずなのに。僕が貴方の色を好きだと言ったから。
 今でも、たまに、この紅を見て、顔を顰めているの、知ってるから。
 なのに、今日は笑っていてくれるから。

 思わず抱き締めていた。

「どうしたんだよ、急に…」

 困ったような貴方に、貴方がこの華に溶けてどこかに行ってすまいそうに思えたから、などとは言えず、僕はただ黙ったまま、くちづけた。
 優しくそれを受け止めてくれる貴方に甘えて。

「誕生日、おめでと。なんも用意できなかったから、さ…。こんなんでごめん」

 ちょっと照れたように言う貴方が愛おしい。

「ありがとうございます。荷物増やすと怒られちゃいますからね。この景色、大事に胸に仕舞って行きます」

 ただただ、貴方が僕の誕生日を覚えていてくれたことが嬉しかったから。
 貴方と一緒なら…ここが地獄の業火の真っ只中でも、一緒に溶けてしまってもいいと思った。



 いい月の夜だった。
 中秋の名月、って言うのか、こういうの。

 近くに街はなく、野宿。
 灯りは野営のための焚き火だけ。
 そのせいか、月がいつもより輝いて見える。

 まぁ、暑いから風邪引く心配もねぇし、この満月もいい。

 猿は高鼾。その隣で寝苦しそうに三蔵が寝返りを打って、それでも眠っている。
 一日の運転で野営の時の飯作り。そして明日も運転な八戒は、無理矢理寝かせた。

 静かでいい夜だった。悟空の鼾さえ聞こえなきゃ、だけど。

 手元にはいつものカップに八戒が作って火の傍に置いておいてくれた珈琲。

 野営の寝ずの番はいつしか俺の役目になってた。けど、こんな月の夜は得した気分になるんだよな。
 単純っちゃ単純だけど。

 けど…こんな月なら、酒でも飲みながら愛でてぇもんだぜ。

「悟浄?」

 背後から声。
 八戒が起き上がって俺を見てた。

「八戒、いいから寝てろっての」
「この月、独り占めする気ですか?」

 笑いながら俺の隣に移動してくる。
 手元の荷物を漁って、出したのは、酒。

「どうですか? 一杯」

 悪戯っ子のように笑う八戒に俺は、いいねぇ、とカップの珈琲を飲み干すと空のカップを差し出した。
 なみなみと注がれる酒。その瓶を取って俺も八戒のカップに酒を注ぐ。

「中秋の名月に」
「僕たちの旅に」

 俺たちは風流さには程遠いアルミのカップで乾杯をした。

 風情を求めるより、ずっと俺たちらしい月見だった。


 悟空が酒飲める歳になったら、四人でこうやって酒を飲めたらいいな、とふとそんなことを思った。





悟浄ブログより転載



「でかい月だなぁ」
 空を見上げると、澄んだ秋の空に大きな満月。
 雲ひとつない空に煌々と輝いていた。
「珍しくもねぇだろ?」
 俺はちらりと見上げただけで、手元の盃に視線を落とす。
 なぜか、肴に用意されていた団子を一つつまむと、意に反して程よい塩気。
 甘いかも、と覚悟してただけにそれはすごく美味かった。
「月見んの、初めてじゃねぇだろ?」
 ずっと空を見上げたまま動かない捲簾が不思議だった。
「こういうの、中秋の名月、って言うんだろ? 俺のいた場所ではこんな綺麗な月、見た事ねぇかも…」
 ため息でもつきそうな声で、捲簾がぽつり、と呟いた。
 こいつがどこから来たのか、なんて聞いたことはないし、聞く気もねぇけど。季節の移り変わり一つ一つに感動する捲簾が可愛くて、月見しよう、って言葉につい、乗っちまった。
 野郎二人で色気のねぇ話だ、とは思いつつ、こんな子供みてぇに喜ぶこいつを、他の誰にも見せたくなかったから。
 捲簾の作ってくれた団子を肴に酒を飲みつつ、煙草に火を点ける。
「なぁ、月は逃げねぇし、どんなに見てたって手には入らねぇぞ? 座って飲もうぜ?」
 俺のことなんかほったらかしで月に心を奪われている捲簾に声をかける。座っていた縁台から立ち上がって煙草の煙をその視線の前にわざとらしくふきかける。
 それで我に返ったのか、捲簾がやっと俺を見た。
「なんだよ、悟浄。月に嫉妬でもしたか?」
 笑いながら撫でてくる手がやっぱり好きだ。
 月に嫉妬なんかしたって仕方ないのに。してたのか? その手が嬉しくて、捲簾が撫でやすいように、と腰を下ろした。
「月の兎も一匹だと寂しくて死んじまうのかねぇ?」
 ひとしきり撫でて満足したのか、離れた手に俺から思わず不満そうな声が漏れると捲簾はもうひと撫でして、そんなことを言いだした。
「兎は性欲が強くてそんなこと言われるようになっただけ、って聞いたことあっけど?」
 隣に座った捲簾の方を見もせずに俺は言った。
「知ってる。けどよ、それじゃまんま過ぎてムードねぇだろ?」
 捲簾の持った盃に酒を注ぐ。
「そうだけど…。でもなぁ。あんた、それで俺を揶揄う気満々だったろ?」
 盃の酒を一気に煽って、捲簾は意外そうに俺を見た。
「よくわかってんじゃねぇか」
 そりゃ、わかる、っての。なんでだかわかんねぇけど、俺はこいつの考えてることが自分のことのようにわかることがある。気が合う、ってんじゃすまねぇくらい。シンクロ、って感じかね?
「でもよ、それも含めて言ってんだが、俺は」
「は?」
 思わず絶句する。なんでそうなんだよっ。
「最近、俺と一緒に住むようになって落ち着いたみてぇだが、お前、夜毎にオンナとっかえひっかえしてたみてぇじゃねぇか。性欲も、かもしれねぇか、やっぱ、寂しいの、嫌だったんじゃねぇの?」
 揶揄われた筈なのに。撫でてくる手が気持ち良かったから。反論できなかった。
「目も紅いしな…。兎だよ、やっぱお前は」
 俺はもう何も言わず、団子をもう一つ取って口に運んだ。
 塩気のあるはずのその団子は、ほのかに甘かった。


 こうやって、捲簾と穏やかに過ごせる夜が、愛しいと思った。
 どれだけの時間、俺たちはこうやっていられるのだろうか。


(この記事は8月中一番上に置かれます)


 8月は八戒月間、ということで、無謀な企画をしてみることにしました!

 色んな最遊記キャラが八戒を語ります。
 あくまで原作寄りを目指しますが、場合によっては、BL寄りになることも。
 BL寄りになるキャラが何人かいたとしても、まぁ、別次元の話、ということでスルーねがいます。

 そして、メインキャラ以外は、すごくエセですが、笑ってお読みいただける方だけ、よろしくお願いします。

 一日1キャラ。走り切りましたら(?)拍手お願いします←

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夏風亭心太


 酒、煙草が好き。
 猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
 夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
 
 こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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