くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
Category:最遊記
紅い男が呼ばれた声に反応して俺は立ち上がった。
そこにいたのは…そして…その後には…………。
「…れん……捲簾?」
急に背後から肩を叩かれ振り返る。
「どこにいたんです? 随分探しましたよ?」
天蓬がいた。
「……どこで飲んだんです? 討伐すんだばかりじゃないですか…。それに、それは?」
言われて初めて、俺は手に紅い男のカップを持ったままであったことに気付いた。
「なぁ…天蓬……上……」
そこには満開の桜があった。下界の桜はやはり、天界のそれより綺麗だと思う。
「ああ…綺麗、ですね…」
男に貰った煙草を咥え、煙を吐き出しながら樹の幹に手を置く。
「その煙草…見ないものですね…」
「なぁ、この樹って、どんくれぇ生えてんのかな? どんくれぇ、生きるのかな…」
天蓬の言葉は無視して俺はその樹の肌を撫でた。
「これくらいの大きさだと…およそ500年~600年と言ったところ、ですかねぇ…。僕にも一本くださいよ、煙草」
差し出される天蓬の手に煙草を一本渡し、手に持ったままだったカップに入っていた酒を飲み干した。
「何か、あったんですか?」
「あった…のか、なかった、のか…」
「なんですそれ?」
「桜も100年も生きれば精霊でも宿るのかね…。夢を、見たんだよ、たぶん、な。なぁ、天蓬…いつか、みんなでこの桜の下で花見でもしてぇ、な…」
そう、みんなで……。
「彼らと、ですか? 今度討伐の時はお酒、隠し持って来ます?」
天蓬が後を振り返ると丘の下に俺たちの仲間がいた、天界西方軍第一小隊の仲間が。
「あいつら、もいいけどな…。金蝉と悟空とお前と、俺で、さ…」
「ああ…いいですね…それ…」
「悟空が…酒でも飲めるぐれぇ大きくなったら…一緒に…」
「じゃ、早く下界の混乱を収めないと、ですね。そのためにも、今は帰りますよ、捲簾」
踵を返して丘を降りようとする天蓬の背中に、ちょっと待って、と声をかけて俺はその樹に登り始めた。
「何してるんです、捲簾?」
立ち止まって俺を見上げる天蓬に俺は笑って見せた。
「この樹だって目印つけとこうと思ってさ」
樹の上に着き、適当な枝に持って来たカップを引っ掛けて降りてきた。
「下界の桜、という意味じゃなかったんですか?」
俺の行動に笑いを隠せない声色で聞く天蓬に。
「この樹、がいいんだよ…この桜、がな…」
もう一度樹の肌を撫で、俺は仲間と合流した。
「なぜ笑う」
傲潤が俺に刃を振りかざしながら聞く。
「そう決めてたからだ」
最後は笑って逝こう、と。
あの紅い男に貰った煙草の最後の一本の香りが、血の匂いに混ざってそれでも濃く俺に焼き着いていた。
あいつの背後に見たのは…確かに天蓬で…遠目にはちゃんと金蝉も…成長した悟空も、いたんだ。
それがどれだけ先のことなのか、わからねぇけど…。
来世もあいつらと一緒なら……あいつが俺なら………。
それも、悪くねぇ…。
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夏風亭心太
酒、煙草が好き。
猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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