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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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三蔵「何がクリスマスデート、だ。こんな朝っぱらから水族館なんざやってるわけねぇだろうが、バカッパ。あ、カッパだから水のあるトコ来たかったのか。だったら最初からそう言いやがれ。川にでも投げ込んでやるぞ」

悟浄「え~、いいじゃん。これだけ早いと人少ねぇし? こうやってあっためあえば、ホントに恋人気分じゃね?(ぎゅぅ~)」

三蔵「何考えてやがる!(がぶっ)」

悟浄「あ、ひでぇ…。首筋に噛み後つけるなんて…。あ、所有印? だったら嬉しいな~。見せびらかして歩いちゃおv」

三蔵「……………バカッパ…(自分の首からマフラー外し)」

悟浄「バカじゃねぇよ~」

三蔵「これ、巻いて隠してろ!」

悟浄「え? 貰っていいの? やった~!」


 なぜか、クリスマスプレゼントを渡すために首に齧りつきたかった三蔵。
 バカッパ、じゃなくて、ばかっぷる。

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 ドアベルが鳴って、俺は磨いていたグラスから顔を上げる。
 入ってきたのは…闇、だった。

「あ…あんた…」

 思わず持っていたグラスを取り落としそうになる。
 キミが店を出したって聞いてネェ。イイかい? そいつは相変わらずの嫌な笑顔で入ってきた。
 客を追い出すわけにもいかず、光を失ったそいつが困らないように、俺はカウンターを出てそいつをスツールまで手を引いてやった。

 優しいネェ…。 にやにやと笑いながら言うそいつに俺は苦い顔をして見せるが、見えてねぇのは知ってる。

 目の前にコースターを灰皿を用意する。

「何、飲む? 烏哭三蔵」

 いつもなら来た客の雰囲気を感じて作るカクテルも、こいつの前だと手が止まる。
 すべてが終わって、もう敵じゃないことはわかってる。それでも…。
 キミのお薦め、貰おうかな?
 俺の気も知らぬげに相変わらずの軽薄そうな笑顔を貼り付けて見えない目で俺の方を見た。

 じっと、烏哭を見る。
 手にぺティナイフを握った。
 ソレでボクのこと刺す気じゃないよネ?

「そんなことするか」

 勘の鋭さに驚きつつ、もう一方の手にライムを握る。その皮をくるくると上から下へ剥いていった。
 柑橘類の爽やかな匂いが、俺と目の前のヤツには不釣合いすぎて笑えてくる。

「あんた、さ…」

 今、なにやってんの? 思わず続けそうになった言葉を飲み込む。
 聞いたって仕方ねぇ。ただ、無言の空間に耐えられねぇだけ。
 どうしたのかな、キミ? 言いたいコトは言った方がいいんじゃない?
 無言のまま、剥いたライムの皮と氷を入れる。
 見えないはずなのに、まっすぐに俺を見るその目にイラつく。

「ホントは目、見えてんじゃねぇの?」

 思わず聞いた。
 見えてるよ、闇が、ネ。
 煙草を咥え、火を探すそこへ俺は火を差し出していた。そして、空いた方の手を灰皿に導いてやる。

 闇を見ている男の前に俺はグラスを置いた。
 烏哭はゆっくりと探るようにしてグラスを取って一口、飲んだ。
 ずいぶんと濃いカクテルだネェ。 言いながら美味しそうに飲むその様子に俺は自然と微笑んでいた。
 もう、こいつは敵、じゃねぇ。
 ただの、客、だ。

「ブラック・トルネード」

 カクテルの名前を口にする。黒い色のカクテル。まさしく、こいつの色、だろう。
 黒い竜巻、ネェ…。ボク、らしい、かい?
 そう言って笑ったその顔はどこか切なそうに見えた。
 確かにこいつは、敵にいたころはそうだったが、な…。

「いんや、別に。他に黒い酒、思いつかなかっただけ」

 誤魔化せてねぇんだろう、な。
 光を失い、敵として対峙することのなくなった烏哭は…どこにでもいる、死にそびれた男、だった。
 俺となんら変わりゃしねぇ。

 ゴチソウサマ、美味しかったヨ。
 烏哭はそう言うとスツールから腰を上げた。
 俺はカウンターから出て、その手を取る。

 また、来るヨ。
 その背中を見送り、俺はため息を吐いた。

 仲間じゃない、敵だった、男。
 三蔵や八戒、悟空を見るのとは違って、あの旅の暗黒部分を思い出した。
 俺が屠った命は…無駄死にじゃなかったと言い切れるのか…。こんな血に染まった手で、のうのうと生きてていいの、か。
 やっぱりあいつは黒い竜巻なんだ、と思った。



・ブラックトルネード レモン・ハート・ホワイト30ml、ブラック・サンブーカ30ml、ライムジュース20ml、イエーガー・マイスター1スプーン、ライムの皮一個分 シェーク アルコール度数30度


 差し出された手を、俺は取れずにいる。
 碧の瞳が何を望んでるか、なんざ最初からわかってんのに。

 親友だから、とか、今の関係を壊したくねぇから、とか。
 自分を諭す心の声が嘘だってことは最初からわかってる。

 怖い、だけ。
 親友ではない関係になることとか、この居心地のいい場所を失うのが、じゃない。

 怖いのは、自分の感情。
 自分の過去。

 愛だの恋だの…そんな甘い感情なんざ知らない。
 愛しまれた記憶なんざ、ねぇ。
 だから。
 自分の中にあるもやもやとしたこの感情に翻弄される。
 それが、怖い。

 生きるため、そう言い聞かせながら辿ってきた過去。
 人殺し以外はなんでもやった。
 ヤローの抱き方だって知ってる、抱かれ方だって知ってる。
 それを知った時、あの碧がどんな色に染まるのか…。
 それが、怖い。

 あいつには、これって辛い仕打ちなんだろうな…。
 わかっちゃいるけど、あいつは優しいからなんも言わない。
 俺は怖いからなんも言えねぇ。

 あいつの優しさに甘えたまんま…。
 いつかこの恐怖心から解放されたい、ただ、それだけを願って、今日もあいつにじゃれつく。






 空を見上げると半分だけ掻けた月があった。
 吐く息が白い。
 半分だけの月なのに、街灯のない場所でも足元が見えるほどに明るかった。
 日付が変わったばかりの街を俺はほろ酔いで歩いた。
 月の色が、あいつを思い出させた。


 昼過ぎに着いた街。
 全員の疲労を考え、そこで三日ほど滞在すると決めた後、俺は夜を待って酒場へと出かけた。
 情報収集と小銭を稼ぎ、宿への帰路を辿った。


 寝静まった街。
 明かりの消えた宿の入り口。
 閉め出されたか、と苦笑しながら宿の周りを一周。
 八戒と悟空の部屋は二階だが、三蔵の部屋は一階だったはず。
 早寝のあいつらのことだ。せっかく雨露を凌げる屋根の下で暖かいベッドもあるってのに起きてるわけもねぇ、か。
 起きてりゃそこから入れて貰うつもりだったが、ダメならさっきの酒場に戻ってオンナでも引っ掛けるか、と諦め半分だった。
 開いている窓を、見つけた。


 空を見上げる。
 綺麗に輝く月がある。
 そして、開いた窓の中に、その月と同じ色を見た。


 三蔵はイライラした様子で、点かないライターのホイールを何度も何度も回している。
 俺は火の点いたジッポーをそこへ差し出した。

「また夜遊びか。単独行動は控えろ、と言ったはずだ」

 面白くもなさそうに差し出したライターで煙草に火を点けながら俺の方を見もせずに言う。

「夜遊び、ねぇ…。ま、否定はしねぇけど? 情報収集も兼ねてんの、知ってんだろ?」

 その窓から俺は室内に入った。

「なんだ?」
「いや、俺、閉め出されちまってよ。いいじゃねぇか、こっから入るぐれぇ」
「そのまま閉め出されときゃ良かったんだ」
「だって、単独行動は控えなきゃ、だろ?」

 嫌がることを承知で俺は三蔵のベッドに腰を下ろす。

「とっとと部屋へ戻れ。俺は一人で静かに過ごしたい」

 予想通りの反応に俺は笑うが、三蔵には見えていないだろう。俺にも三蔵の表情は見えない。

「いいじゃねぇか。少しあんたと話してぇんだよ」
「何を、だ? 旅を抜ける、ってんなら止めはせんぞ。勝手にしろ」
「誰がんなこと言ったよ。今更、じゃねぇか。いい暇つぶしだし?」
「じゃぁ、なんだ。俺に用はねぇ」

 吸い終った煙草を灰皿に投げ入れる三蔵を見てから俺は煙草に火を点けた。

「別に俺も用はねぇけどよ…」
「話したいと言ったのはてめぇだろうが」
「用がなきゃ、話しもしねぇのか? いいじゃねぇか、別に」

 月に消えるんじゃないかと思った、なんて口が裂けても言えねぇ。
 窓の外を見る三蔵の髪は外に見える月と今にも同化しそうだった。

「あんたさ、今日、誕生日、ってやつじゃねぇの?」

 八戒と悟空がチェックインの後、明日は三蔵の誕生日パーティしよう、と話していたのを俺は聞いていた。

「ふん、くだらねぇ。それがどうした」
「そうは言ってっけど、あんた、あいつらにつきあってやるつもりだろ?」

 返事はない。が、面倒臭そうな表情で、楽しむあいつらを眺めるんだろう。三蔵はそういう奴だ。

「どうせお前も参加してバカ騒ぎすんだろうが。俺は酒が飲めて、飯が食えりゃいい」
「そうだな、たぶん。あんたの誕生日、なんつ~こと関係なしに騒ぐだろうぜ、きっと。だから、さ…」

 三蔵の傍に行き、その横にある灰皿に煙草を押し付ける。
 それを横目で見やって、三蔵が新しい煙草を咥えた。

「今のうちに言っとこうと思って」
「何を、だ?」

 ジッポーで、三蔵の煙草に火を点けてやった。

「おめでとう、ってさ」

 その火がプレゼントみてぇな流れになっちまったが、まぁ、いいか。
 三蔵が面白くもなさそうに鼻を鳴らすのを聞いて、こいつらしい、と思う。

「用がそれだけならとっとと出て行け」
「あ、もう一個」

 俺はポケットから100円ライターを取りだすと三蔵の手に握らせ、その部屋を出た。


 自室に戻り、窓を開ける。
 月が、見える。
 あいつの誕生日があいつの生まれた日ではないとしても。
 それでもあいつが生まれて生きてることには感謝しても、おめでとうと言ってもいいじゃねぇか。
 今じゃ俺たちは誰一人として欠けちゃなんねぇ、そんな仲間だから。

 真下の部屋からマルボロの香りが漂ってきた。


 



 冷たい小川の水で洗物を終えて、僕は抜けるような秋の青空を見上げる。
「もうそろそろ、野宿は無理ですねぇ…」
 ため息と共にそう一人ごちると、大きく伸びをしてから洗ったものを手早く片付け、仲間が出発の準備をしている場所へと戻った。

「西、でいいですね?」
 毎日のように確認する同じ台詞。ジープにエンジンをかけ、全員が乗り込むと、スタートの合図は三蔵の言葉。
 けれど、今日は少し違った。
「少し逸れてもいい。街のある方へ向かえ」
 もう5日も野宿が続いてるので、当然と言えば当然の台詞に僕は黙って肯くとジープをスタートさせた。
「悟浄、地図見てくださいね」
 背後の悟浄に地図を渡す。三蔵が見る気もないことはわかっていた。
「少し北に向かったとこに街、あるな。この地図が正しけりゃ、だけどよ」
 確かに、異変のせいかあったはずの街がなくなっていた、ということも珍しくはなくなっている。それでも、そこに街がある事を信じて、僕はジープを北へ向けた。


 そこはかなり大きな街で、入った瞬間から、そこここでお肉を焼く良い匂いがしていた。
「俺、腹減ったぁ~」
 悟空がいつもの台詞を吐き、元気なく項垂れるのを見て、思わず笑ってしまった。
「確かに、食欲を刺激される匂いですねぇ…。宿を取ったら、僕らも今夜は焼肉、ですか?」
 それとなく三蔵を見ながら悟空に声をかけると、嬉しそうな声が聞こえ、横では三蔵が一言、勝手にしろ、と呟いた。

 宿で宿泊の手続きを取る。ツインを二部屋押さえながら、宿の主に訊ねてみた。
「美味しい焼肉を食べたいのですけど、どこかお薦めのお店はありますか?」
「あ~、どうかねぇ…。今日はどこもいっぱいだと思うよ? なんせ、いい肉の日、だから、ねぇ…。まぁ、ちょっと待ってな? 知り合いんとこに聞いてみてやるよ」
 気軽にそう言うとご主人は電話に手を伸ばす。
 いい肉の日………ああ、そういえば…日付の感覚が薄れていたことに気付いて、僕は失笑してしまう。
 そして、キーの一つを悟浄に渡して、部屋割りを悟浄と悟空、三蔵と僕、にした。
 今日は、三蔵に静かに過ごして欲しいと思ったから。幸いあとの二人は今日が何の日なのか思い出していないようだし、その方がいいだろう。
「兄ちゃん、ここ出て左に行って5軒目の焼肉屋がOKだってよ」
「あ、ありがとうございます」


 僕らにとっては日常の、街の方々にとっては普通じゃないいつもの夕食を終えて、僕らは宿に戻って来た。
 三蔵は部屋に入ると窓辺の椅子に陣取って煙草を手にボンヤリと外を見ている。
「三蔵、珈琲をどうぞ?」
 僕はその目の前にいっぱいの珈琲を置いた。砂糖とミルクも添える。
 ブラックのまま口をつけるのを見て、僕は微笑んでいた。それは三蔵自身も気づいていないだろう健康のバロメーターだから。
 疲れている時の三蔵は、無意識に砂糖とミルクを入れる。5日も野宿が続いたのに、彼の体調は良いようだ。
「三蔵…?」
「………なんだ?」
 しっかりと一服味わった後に三蔵が返事をする。それへ、おめでとうございます、と言いかけた僕の言葉は思わず止まってしまった。
 知り合って間もない頃、三蔵の誕生日…この日にそれを言って嫌な顔をされたことを思い出した、から。


「俺の誕生日は…俺の生まれた日、じゃねぇ…」
 彼はそう言って目を伏せた。


 今朝、小川の水はすでに冬の気配を含んで冷たかった。あの冷たい水の中を、赤ん坊の彼は流されていた、のだ。
「三蔵?」
 僕はもう一度彼の名を呼ぶ。
「だから、なんだ?」
 今度はすぐに反応があり、その紫の瞳がまっすぐに僕を見た。
 目にかかるほどに伸びた前髪を持ち上げ、三蔵のチャクラの上に静かに唇を落とす。
「て…めぇ!」
 驚いたように見開かれた目に僕はにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます、三蔵…」


「だからお師匠はいつも、おめでとう、の代わりに、ありがとう、と言ってたな…」
 遠くを見つめる三蔵の目は優しかった。


 だから、僕も、ありがとう、と言う。
 僕の手を取ってくれて。
こうして隣にいてくれて。
僕を救ってくれて。
生きていて、くれて。



今日は、ありがとう、の日。
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