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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 店に出勤するとオーナーからのメモがカウンターに一枚。

『本日のお客様はそういちさん、とおっしゃいます。私がとてもお世話になっている友人なので、粗相のないよう、お願いします。』

 んな大事な客なら自分で迎えろよ…。

『悟浄のことが大好物な方なので、悟浄さんが接客されればとても喜ばれると思います。お酒には弱い方なので配慮してくださいね。』

 大好物ってなんだよ…大好物、って…俺は食いもんじゃねぇ、っつ~の。
 メモに一々突っ込んでみて、不毛過ぎて笑えた頃、ドアが軽やかなベルの音を響かせて、開いた。

「いらっしゃいませ、そういちさま」

 名前から想像していたのは野郎だったが、ドアを潜って来たのはどこか支えたくなるような線の細さを持った女性だった。
 あのふくよかなオーナーのご友人、ねぇ…。二人で並んでるとこを想像したら、少しオーナーが気の毒で笑えてきた。
 きょときょとと狭い店内を見回す彼女を俺は目の前の席に促す。
 コースターを置いてからじぃ~、と彼女を観察し、俺は一杯のカクテルを作った。

「ブルース・ブルー、です。甘口のカクテルなので、飲みやすいと思いますよ?」

 なんで、これを? と聞くそういちに俺はにっこりと微笑んだ。

「貴方の色だと思ったので。綺麗なブルーでしょう?」

 どうぞ、と勧めると一口飲んでから、美味しい、と笑ってくれた。笑顔はよそうしていたより幼く感じた。

「何か?」

 俺の方をじぃ、と見ているそういちの視線に居心地の悪さを感じる。
 なんか悟浄じゃないみたい、と言われた。もっとくだけてたほうが悟浄らしいのに、と。

「そ?」

 まぁ、俺もよそ行きの言葉には違和感があるし、彼女がいいと言うんならいいんじゃねぇかな、くだけても。
 つっても、女を前にくだける、っつ~と口説く以外のこと知らねぇんだがな、俺は…。

 脳裏を過ぎったオーナーの台詞。
 喧嘩と、コトをいたすのは禁止、だったっけ…。
 まぁ、大丈夫だろ…。

 悟浄も何か飲まないの? そういちに声をかけられて、そうだな、と悩む。酔わないもののが良いんだろうが…。
 同じモノ、飲んで? 彼女の声に我に返り、俺はシャンパングラスを二つ用意した。
 ビターズを垂らした角砂糖をグラスの底に置き、シャンパンを注いでレモンスライスを浮かべて一つを彼女の前に置いた。

「Here's looking at Your kids.」

 え? と彼女が聞き返すのに俺は笑った。

「君の瞳に乾杯。カサブランカでハンフリー・ボガードの言った有名なセリフだ。臭かったか?」

 首を横に振るそういちにグラスを持つように促すと、掲げるという形の乾杯をしてその甘いカクテルを咽喉に流し込む。
 これ、飲みやすいですねぇ。そういう彼女の顔は、アルコールのせいかすでに上気している。
 カウンターに置いてた俺の手をそういちの手が握り締めた。
 悟浄だぁ~、と今更のように言う彼女はすっかり酔ってるようで、握った手を持ち上げて頬を摺り寄せる。
 抱きついていい? ダイレクトに聞かれて俺は返答に困った。
 カウンターから出てきて欲しいなぁ、と上目遣いに見られるのに俺は曖昧に笑った。

「もう一杯か二杯、何か飲まないか?」

 じゃぁ、悟浄の色のカクテルがいい。と言うので、俺は再びシェーカーを取った。
 真っ赤な液体をカクテルグラスに注いで出す。

「ネイキッド・レディだ。裸のレディ…お前さえ望むなら…」

 えっと…と少し困ったように言って、それでもそのグラスを手に取り口をつける。

「ショートカクテルだから、素早く飲んで?」

 甘くて口当たりはいいはずだから、と勧めると、本当だね、と言いながらそういちは一気に煽った。

「もう一杯どう?」

 シェーカーを手に聞くと、嬉しそうに微笑む彼女。悟浄がシェーカー振ってる姿、格好良かったから、と言うその言葉に嬉しくなって、同じものをもう一杯。
 それも一気に煽って、彼女はそのままカウンターに突っ伏してしまった。

 ホントに酒に弱いんだ…俺はカウンターから出て、風邪を引かせぬように肩を抱いてやった。



・ブルース・ブルー ブルーベリーリキュール15ml、フレッシュグレープフルーツジュース45ml、ブルーキュラソー1スプーン シェーク アルコール度数 4

・シャンパン・カクテル シャンパン適量、アンゴスチュラビターズ1ダッシュ、角砂糖1個、スライスレモン1枚 ビルド アルコール度数 12

・ネイキッド・レディ ホワイトラム20ml、アプリコットリキュール10ml、スイートベルモット20ml、レモンジュース10ml、ベネディクティンDOM1スプーン、グレナデンシロップ1/2スプーン シェーク アルコール度数 25.2




 悟浄ブログの方で来たいと言ってくださったそういちさんにご登場いただきました。
 こういうリクエストと最遊記キャラを交互に出して書いて行けたらいいと思っています。
 来たいと言ってくださった方を登場させた場合はご本人の承諾を得てからUPさせていただきます。
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 店のオープンの時間。

 小さな看板に電気をつけ、カウンターの中で煙草を片手に自ら作ったレッド・アイを飲む。

 誰か来るのか誰も来ないのか…。どこから来るのか、いつの時代なのか…店が営業してる間はドアの向こうに繋がる世界に俺は出ることは出来ない。

 からん、とドアベルが軽い音を立て、ドアが開いた。

 いらっしゃいま………って、八戒かよ。

 ご挨拶ですね、貴方が珍しく定職に就いたと言うからわざわざ様子を見に来たと言うのに。少し心外な顔をして見せた八戒はそれをすぐに隠して、小さなカウンターの一番奥の席に座った。

 目の前にコースターを滑らせ、俺はシェーカーを手に取り、早速一杯作ってサーブした。

 マルガリータ? あまりにベタじゃありません? 苦笑しながら、八戒はグラスを取る。
 このカクテルの製作者の亡くなった恋人の名前、なんですよね。悲恋のカクテル、ですよねぇ。悲恋、というにはさっぱりと口当たりの良いカクテルですけど。

 ショートカクテルの名の通り、八戒はすぐにそれを飲み干すと、次は何を用意してくださるんです? と俺を挑発でもするかのようにまっすぐに見つめる。

 またベタだと言われるかもしんねぇけど…今度は、八戒の瞳の色のカクテルを用意してみた。

 これは? 酒の色と同じ瞳が少し伺うような表情でグラスの中身を見る。

 モッキン・バード、ってカクテルだ。綺麗な色だろ?

 そうですね。グラスを取り、ゆっくりと舐めるように飲み、八戒はニッコリと微笑んだ。
 すっきりと飲み心地の良いカクテルですね。

 ああ、中々いいだろ?

 貴方も何か飲んでいます? 美味しそうに飲み干し、気に入ったらしく同じものを、という八戒にもう一度モッキン・バードを作ると、自分用に冷蔵庫から取り出した冷えたトマトジュースとビールをグラスに注ぐ。
 レッド・アイ? 二日酔いなんですか、悟浄? 二日酔いの朝に迎え酒代わりに飲む事もあるそのカクテルに八戒が眉を顰める。

 いんや。バーテンが客より先に酔っ払うわけにはいかねぇだろ?

 俺が笑って言うと、考えてるんですね、それなりに。ともう一度微笑む。

 それなりに、は余計だっての。あ、そうだ、八戒、お前に飲ませてぇ酒、あんだけど。

 なんです? 訝しげに小首を傾げる八戒に俺は、綺麗に澄んだグリーンの酒が入ったビンを取りだして見せた。
 アブサン、ですか? なんでまた…。苦笑する八戒に俺は真剣な顔で答えていた。

 いや、お前さ、酔い潰れることってねぇじゃん。いっぺん見てみてぇんだよな、お前が潰れるトコ。

 僕を潰してどうするつもりですか。襲わないでくださいよ? かなり真剣に言われて、俺は思わず飲んでた酒を噴き出す。

 お前襲ったって楽しくねぇ、っての。まぁ、酔い潰れたら、顔に落書きしてやんよ。

 いいんですか? そんなこと言って。というか、僕を潰しても仕方ないでしょう? お店の邪魔になるじゃないですか。いい時間だというのに、自分以外に客が来ないことに今更ながらに気付いて、八戒は少しソワソワとしだす。

 いいんだよ。この店は一晩に一人の客しか受け付けねぇ。落ち着け、っての。

 それで…採算は取れるんですか? 心配そうに聞いてくる八戒に俺は肩を竦めて見せた。

 さぁ? 俺は雇われバーテンだしな~。オーナーがそれでいい、つってんだからいいんじゃねぇの? なんでも、来たいと思ってる客と招待したいと思ってるバーテンの心がシンクロした時だけ、バーのドアがその客の前で開くとかなんとか、わけわかんねぇこと言ってたしなぁ、オーナー。

 悟浄は僕を招待したかったんですか? 最初のお客として。意外です、と心底驚いたような表情で言う八戒に俺は苦笑した。

 どうだろ~なぁ。最初の客は、やっぱかわいこちゃんが良かったんだけどよ。お前は様子を見に来たいと思ってて、オーナーがお前を招きたかったんじゃねぇのかな?

 まぁ、そんなところでしょうねぇ。八戒も俺に釣られたように苦笑する。

 んで、ど~する? 飲んでみるか、アブサン。

 その綺麗な緑はまるであいつを誘うようにビンの中で揺れていた。
 そうですね、いただきましょうか。ニッコリと微笑む八戒の目の前に、それと氷だけを専用のグラスに入れて差し出す。
 ちょっと、悟浄…。いくらなんでもこれは…。アブサンをロックで飲むのは無理ですよ…。アルコール度数、どれだけか知っているんですか? 焦ったような八戒を少し楽しんでからアブサンスプーンと呼ばれる独特な形のスプーンに角砂糖を用意する。

 アルコール度数は…最高の奴だな、これ。89%だってさ。

 ビンを見ながら答え、角砂糖にアブサンを垂らしてグラスの上にアブサンスプーンを置くと、火を点けた。
 薄暗い店内で青い炎が揺れる。
 旅の間、何度も火の傍で過ごしましたよねぇ。 八戒が遠くを見るように炎を眺める。
 また、旅がしたくなりません? そう言って八戒はクスリと笑い、俺が用意したミネラルウォーターを燃える砂糖にかけると火を消して、それを落としこむと混ぜる。
 ゆっくりと白く濁ってゆく酒を二人でただ、眺めていた。


 酒と水と砂糖と炎。その4つのものが混ざったとき、その強い酒は得も言われぬ風味を増す。
 俺ら4人がそうだったように……。



 最初の客、そして、俺の選んだ酒…すべてはあの旅の日々の追憶なのかもしれない。











・マルガリータ テキーラ30ml、コアントロー15ml、フレッシュレモンジュース15ml レモンで湿らせたグラスの縁をソルトでスノースタイルに。 シェーク アルコール度数20

・モッキン・バード テキーラ30ml、グリーン・ペパーミント15ml、ライムジュース15ml シェーク アルコール度数26.3

 大きな建物の狭間の路地裏。
 なんでそんなとこに入り込んだのかわからねぇけど、気がつくと俺はそこを歩いてた。
 突き当たりに黒く塗られたドアがあった。
 そこに深紅の文字で「Crimson Moon」と書いてある。
 吸い込まれるように、俺はそこに入っていた。

「いらっしゃいませ、沙 悟浄さま。お待ちしていました」

 中はカウンターだけの小さなバーだった。
 黒を基調にした室内に薄暗い間接照明の落ち着いた店内のバーカウンターの中で一人の人物がグラスを磨いていた。

「なんで俺の名前を?」

 磨いていたグラスから顔を上げ、にっこりと微笑むバーテンの身長は悟空ぐらい、眼鏡をかけた小太り、ショートヘアの女だった。

「貴方のために開いたドアですから」

 カウンターに灰皿とコースターを置かれ、俺はバーテンの前に座った。

「どういうことよ?」

 バーテンは曖昧に微笑むと一杯のカクテルを俺の前に置いた。
 その赤い液体を俺は黙って眺める。

「レッド・アイ?」
「いえ、レッド・バードです。悟浄さんにレッド・アイでは軽すぎるでしょう?」

 俺がそれに口をつけるのを待って、バーテンはいきなり切り出す。

「ここのバーテンをしてみる気はありませんか? このバーは時と空間の狭間にある店です。来たいと思う人と招きたいと願うバーテンの思いがシンクロした時にだけオープンするんですよ」
「俺は、来たいなんて思ってなかったけどな…」

 招きたいバーテンの思いに誘われたか?

「旅が終わって、昔の生活に戻り…旅が忘れられないでいる。ぬるま湯の中で惰眠を貪るような生活から抜け出したいと思っている。違いますか?」

 なんで知ってるんだよ、こいつは。
 また旅をしたい、とは思ってねぇけど、戻ったって同じ生活をするしか脳のねぇ俺は結局夜の街で酒と博打に溺れる毎日を送っていた。

「そんな思いが貴方をここに招いたんです。夜の闇がお好みならば、その中で今までの生活を変えたいのならば、どうでしょう? 二日酔いを繰り返す毎日から離れて…」

 話しながらバーテンはシェーカーを振る。

「アイ・オープナー、です。惰眠を貪るだけの生き方から目覚めませんか?」

 俺は出されたグラスを一気に煽る。
 前の酒よりも強いそれに咽喉を焼かれる。
 俺は肯いて、ここ「Crimson Moon」のバーテンになった。




・レッド・アイ  ビール1/2グラス、トマトジュース1/2グラス ステア  アルコール度数 2

・レッド・バード ウォッカ45ml、トマトジュース60ml、ビール適量 ステア アルコール度数 13

・アイ・オープナー ホワイト・ラム30ml、アブサン2ダッシュ、オレンジキュラソー2ダッシュ、アマレット2ダッシュ、砂糖1スプーン、卵黄1個分 シェーク アルコール度数 34.3









 











 最遊記の沙悟浄を主人公に、彼が旅後にバーテンになったとの設定で子話を書きたくなりました。

 時と空間の狭間にあるバー。客は多種多様、一回につき一名サマご案内。

 来てみたいという方、来たら面白いのにと思われるキャラクターのリクエスト(最遊記以外でも可。ただし、おいらは知ってる作品数は少なく、かなりマニアックなものが多いのでリクエストに答えられないこと多し)気軽にコメントください。

 あと、知りたいカクテルのレシピとかのリクエストでもOKです。

 細々と続けて行きたいので、良かったら協力してください。


「やめて…かぁさん…ごめんなさい…許して………痛い…痛いよ…かぁさん……」
――― 誰か…助けて… ―――
 言えない最後の言葉を飲み込んで…。

 頭を抱えるように丸くなって、目尻に泪さえ浮かべて、強張った身体で目覚める朝は…最悪、だ…。





 今夜の宿が個室だと決まった時点で、俺の心は夜の街に飛び出していた。
 あいつと身体を繋げるようになってから、決まったことがある。
 ツインの部屋に同室になったら繋がる。個室になったら、それぞれがゆっくりと休む。
 大の男が二人、安宿の狭いベッドでゆっくりと眠れるわけもねぇから。
 だから、俺は…夜の街に、飛び立つ。


 ふらりと入った酒場のカウンターで隣に座った女と意気投合した。
 お互いに一夜限りと割り切って名乗りもしなかったが、女がすっかり出来上がる頃には、俺は女の部屋に転がりこむことに話はまとまっていた。
 腹の上で女を散々啼かせ、コトがすんだ俺が女を胸に抱いたまま煙草を咥えると、女はそれに火をつけてくてれから、そのまま吸い込まれるように眠りについたらしかった。
 手を伸ばして、サイドボードに置かれた灰皿に煙草を押し付け、女を抱え込む。
 そのまま眠りにつこうとしたが、どうにも寝つけない。
 ゆっくりと身体を離しても、女は身じろぎすらしねぇほど、深い眠りの中。
 俺はそのまま、そこを後にした。


 宿に戻ってシャワーを浴びる。
 皮膚が一枚脱げそうなほど、何度も何度も身体を洗う。
 なんとか朝帰りにはならなかった。
 朝帰りすると、あいつらの視線が痛いし…次回、同室になった時のあいつも怖い。
 女の移り香があいつに知れたら、もっと…怖ぇ。
 冷たい水、熱い湯を交互に浴びて、身体を引き締める。




 何度目だったろう?
 あいつと身体を繋げた後、眠りについた俺は…いつものあの夢を見た。
 丸くなって強張った身体で…泪に霞む視界には、あいつの色が滲んで見えた。
 何から身を守っているのか、と聞かれた。
 何から、だろう?
 ただ、黙って動かない首を無理矢理動かすようにして、首を振ったように憶えている。
 そしたらあいつは、ただ微笑んで、俺の背中を撫でてくれた。
 身体の強張りが、徐々に解けていくような気がした。
 そして、あいつは俺を守ると言った。俺はあいつを守ると言った。
 過去の呪縛が解けたわけじゃねぇけど、その夜以降、あいつの傍でだけは、夢を見なくなった。




 シャワーを浴び終えてバスルームから出ると、外は薄っすらと白んでいた。
 夜明け前だってのに、気の早い小鳥が囀ってるのが聞こえる。
 一度入ったベッドで、やっぱり寝つけなくて、俺は部屋を出てあいつの部屋に忍びこんだ。
 俺の気配に気づいたのか、あいつは無意識に狭いベッドの中、俺のための場所を開けた。
 その空いた場所に俺は身体を滑りこませる。
 濡れたままの髪を肩口に擦りつけるようにすると、冷たい、と言いながらもあいつの手は背中を撫でてくれた。
 そうして俺は…夢を見ない、つかの間の眠りについた。



 深夜の人通りの途絶えた街の中を早足に歩く。


 入った宿で運良く個室が取れたんで、食事がすむと俺は、酒場に繰り出した。
 隣に座ってたかわいこちゃんと意気投合してしっかり飲んだ後、その子の部屋にしけこんだのは…日付が替わる前だったか…。
 小さな部屋に一人暮らしだというその子のベッドに二人で飛び込んで、彼女が買い置きしてたのか前の男の忘れもんか知らねぇゴムを拝借して…たっぷりと楽しんだ。
 俺の胸によりかかるその子の重みと温かさに微睡んで、ふと目覚めたのは、彼女が寝返りを打って俺の上から退けたから、だろうか。
 もう一度彼女を腕の中に抱きこんで眠っても良かったが、朝帰りした時のあいつらの目を思い出すとどうにもそんな気分にもなれず、俺はそこを抜けだした。


 部屋に帰りつくと、狭くてそっけない寒ささえ感じるような真っ白なシーツのベッドが一つ。
 そのままそこに入る気もしなくて、シャワーを浴びる。
 それ以上、時間を潰す術を見つけられず、俺は仕方なくベッドに入った。
 小さなベッドの隅っこで身体を丸める。
 こうやって身体を丸めて眠るのは、なにかから自分を守りたいからなんだと聞いた覚えがある。
 俺は何から身を守りたいんだろう?
 これは、餓鬼の頃からの、癖。
 あのヒトから…あのヒトが振り上げる手から、自分を守りたかったのだろうか…。
 だったら、なぜ、今でもこの癖は抜けない?
 誰かの温もりが欲しい、から?
 夜の闇の中、独り寝で見る夢はいつも悪夢で………。
 
 窓の外が、ゆっくりと白んでゆく。
 早起きな小鳥たちが、新しい一日の始まりを楽しそうに告げる声がする。
 枕元の安っぽいデジタル時計を見ると、4時半過ぎ。
 闇が徐々に光に侵蝕されてくる部屋の中、俺は僅かな時間の微睡みに身を委ねた。
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夏風亭心太


 酒、煙草が好き。
 猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
 夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
 
 こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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