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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 山を抜けると、目の前には黄金の大地が広がっていた。

「え? 秋?」

 間の抜けた隣の声に思わず吹き出す。

「んなわけねえだろうが」

 頭を一つ叩いてやると、かなり本気で怒りだす。
 実は、この瞬間は結構好きだ。まぁ、言ったりしねぇけど。

「あながち、間違いでもないですよ?」

 喧嘩になりそうな気配を感じとったのか、三蔵の機嫌が良くないのを汲み取ったのか、八戒が苦笑しながら振り向いた。

「悟空、これは麦ですよ。こうして麦が実る時期を、麦秋、と言うんです」
「ばくしゅう?」
「麦の秋、と書くんですよ。この先の村は、お米よりも麦で作る麺類とか、パンなどが主食なのかもしれませんね」
「え? マジ?」

 そう聞いて俺との喧嘩を忘れたかのように瞳を輝かせる悟空に、少しイラッとした。
 それほどまでに退屈だったのだ。
 それが意味のない苛立ちだとわかっているけど。

「もしかしたら、美味しい地ビールもあるかもしれませんねぇ」

 ごくり、と咽喉が鳴った。
 俺も悟空のことは言えねぇか…。

 初夏の風が金の大地を撫でて行く。
 ざわり、と揺れる。

 これが、俺たちの旅。
 俺たちも、風に吹かれて揺れて行く。


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「えーと…なんでしたっけ?」
 愛し合った後のベッドの上で眉間に皺を寄せて。
 ぽつり、と呟いて視線を彷徨わせる。
 その翠の瞳に俺なんか映ってなくて。
 俺を見て欲しくて眉毛にキスをしたら、擽ったそうに笑って眉間の皺が減った。
 その途端に、思い出したのか。
「ロゼッタストーンですよ、悟浄!」
 あんまり嬉しそうに言うもんだから、その勢いに負けて思わず頷いちまったけど。
「何考えてんだよ、ベッドの中で…」
 面白くなさそうに言葉を返したら、八戒はすごく綺麗に笑った。
「貴方、行為の最中に想いを刻み付けてやる、って言ってくれたじゃないですか」
 そんなこと憶えてんのか。思わず視線を逸らす。
「悟浄? 赤くなってますよ?」
 くすくすと笑いながら、八戒は優しく鼻の頭にキスをくれた。
「嬉しいんです、その気持ち。でもね、貴方と同じですよ、僕だって、恥ずかしいですよ。だからね、考えてたんです、どうやって刻み込もうかな、って。貴方の言葉、貴方の温もり…」
「刻まなくても、いつでもやっからっ」
 さすがに、日記にでも残されたら…恥ずかしくて軽く死ねる。
「僕だって、見える言葉で残そうとは思ってませんから」
 さらに面白そうに笑う八戒を睨み付けてやった。
「だから…僕の中にロゼッタストーンを作って、誰にもわからない言葉で綴ります。そう、もし零れ出たとしても誰にもわからないように。トーマス・ヤングでもいなければ、綴った僕と刻みつけた貴方にしか、ね?」
 悪戯っぽく笑って、そのロゼッタストーンやらヤングやらの薀蓄を展開しそうな八戒の唇を自分のそれで閉じた。

 夜はまだ長い。
 八戒の薀蓄は明るい時にゆっくりと聞かせてもらおう。
 今は…そのロゼッタストーンとやらに、俺の思いをもっともっと刻み付ける時間。

 気付くと皆が八戒の部屋にいる。
 町に着いて、宿で個室が取れた時の最近の傾向だった。

 名目的には、明日の予定の打ち合わせ。八戒は宿に入ってからもけっこう一人でごそごそと荷物の整理だのなんだのとやってるから。
 以前は、三蔵の部屋に集まるのが常だった。
 が、そうするとその後に八戒が一人で荷物整理を始めるから。

 そう、けれど、それはあくまでも、名目。

 明日の予定の打ち合わせもすませ、なんとなく八戒のやってる荷物整理や買出しリストの作成も手伝って。
「じゃぁ、僕、シャワーを浴びて休みますね?」
 そう言い置いて八戒はバスルームへと消える。
 それでも残された三人は自室に戻ろうとはしない。
「鍵もかけずに、なんて無用心じゃね? 俺らの荷物、みんなここにあるんだし」
 とは悟浄の談。
「バカッパ一人で置いとくと、何しでかすかわからんからな」
 と、三蔵談。
「ちゃんとお休みって言ってねぇし」
 と、素直な悟空。

 かちゃり、と軽い音がして、バスルームのドアが開いた。
「まだ、いたんですか?」
 旅装を解いて、ボトムにシャツという簡単な服装でバスタオルで頭を拭きつつ、八戒が呆れたように言って出てくる。
 上下に動かされる腕。その動きにあわせて上下するシャツの裾。ちらちらと見え隠れする脇腹が悩ましい。
 思わずそこに視線が行ってしまう悟浄と、不自然に視線を逸らす三蔵。
 まっすぐに悟空が八戒に向う。
「八戒」
「なんです?」
「お休み」
 背伸びをして頬にキス。
 それを擽ったそうに受ける八戒。
「これ以上は駄目ですよ、悟空?」
「これ以上?? なんかあんの?」
 きょとんとする悟空の頭を撫で、悟空はホントいい子ですねぇ、と言って三蔵と悟浄の方を意味深に見て笑う。
「おやすみなさい、悟空」
 額にキスを落とすと、悟空は嬉しそうな顔をして部屋に戻って行った。

「さて、僕はそろそろ休みたいんですけど?」
 あなたたちは何がしたんですか? 無言でそう、問われる。
 悟浄が八戒を抱きしめる。なんの手加減もなく繰り出される鳩尾に向けての肘鉄を片手で押さえてキス。
 何度もされて、受け止めるタイミングまで掴めてしまったその肘鉄は、愛情表現だと…そう思っているのは悟浄だけ。
 そんな八戒の腕を引っ張って、掠めるだけのキスをする三蔵。
「気が済んだなら出て行ってくださいね?」
 真っ黒なオーラさえ見える笑顔で言われては、二人とも大人しく部屋を出るしかない。
 二人が部屋を出ると、カチャン、と非情にも鍵がかけられた。


「今日の八戒、いい匂いだったよなぁ…」
「ああ……。おい、悟浄…」
 睨み合う二人。無言の攻防。
「………どっちの部屋?」
 溜め息と共に吐き出される悟浄の言葉。
「お前の部屋だ。俺の部屋の隣は悟空だ」
「しゃ~ねぇなぁ…。んじゃっ」
 無言でじゃんけんを繰り返しながら悟浄の部屋へと二人は消えた。
「くっそっ! 俺の負けかよっ!」


 今夜は悟浄、みたいですねぇ…ご愁傷様です。
 八戒は自室で一人、苦笑する。
 壁の薄い安宿。今夜はどんな声が聞こえるのか…。

 八戒とこうしたい、と思いながら、今夜もお互いを慰める三蔵と悟浄の声を聞きながら、八戒は安らかな眠りにつくのであった。


 


 店に出勤すると、見慣れないものがカウンターの隅に置いてあった。

「なんだ、これ?」

 思わず声に出して、しげしげと眺める。
 二つの球を重ねたような、ひょうたんみたいな形のガラスの…? その上に、なにやらノズルのようなものがついていた。
 オーナーが持ち込んだんだろうけど…まぁ、気にしても仕方がない。
 いつ誰が来るとも知れない店の開店準備を始めた。
 でも、こういった変わったモンが置いてあると、大概誰か来るんだよな…。

 カラン…。

 ほら、来た。

「いらっしゃ……い…ませ?」

 入ってきたのはひどく汚いナリをした老人で、思わず言葉が詰まる。
 これが、今夜の…客?
 思わずその感情が顔に出ちまったんだろう、入ってきた老人は、少し面白そうに笑った。その瞳は、思いのほか若くて、あれ? と思う。
 老人がボロボロの帽子を脱ぐとその下の髪は黒かった。
 タオルを、貸していただけませんかな?
 老人が差し出して来た手に、熱々のおしぼりを差し出す。
 受け取った老人がごしごしと自分の顔を擦ると、そこから現れたのは、鷲鼻の目立つ壮年の男だった。
 腰を伸ばし、薄汚れたコートを脱ぐと男は物珍しそうに店内を見回す。背は…八戒と同じぐらい、か。
 ここは、酒場、なんだね?
 男はそう言うと、ウィスキーソーダを、と注文した。
 そういや、注文されるのって初めて、じゃねぇか?
 グラスを取って氷を入れ、ウィスキーを注ぎ、ソーダを入れる。
 出されたそれを、男は不思議なものを見るような目で見て、一口だけ口をつけた。
 
 君は…
 男が口を開く。ポケットから袋を取り出して、そこから小さなパイプを出すと煙草の葉を詰めだした。
 え~っと…火は…ライターでいいのか? 灰皿は…やっぱいる、のか?
 とりあえず灰皿を出してみる。火は…自分でマッチで点けてたから、いいか。出しかけたライターは仕舞う。
 この店の使用人、だね?
 その言い方に思わずふき出す。
 
「なんでよ?」

 私が入って来た時、追い出さなかっただろう? あんな姿では、金にならないだろうと踏んで、店主ならすぐに追い出しただろうからね。躊躇したのがその理由だよ。
 面白そうに男は言った。
 ところで。
 男はもう一口酒を飲むと申し訳なさそうに、口を開く。

「なんです?」

 もっとまともなウィスキーソーダはないのかい?
 え? ケチつけられた? 一瞬呆然とする。けれど、あまりにも申し訳なさそうな口調に俺は苦笑するしかなかった。
 割合が違ったのだろうか? それとも、ウィスキーの銘柄か?
 悩んでいると男はカウンターの隅に置いてある、あのオブジェを指差した。
 ガソジーンがあるじゃないか。
 ガソジーン? あれ、そんな名前だったのか…。でも、何をするもんなんだ??

「あれは…」

 躊躇していると男は、使い方がわからないのかい? と聞いてくる。
 その通りだ。見たのも今日が初めて、何をするもんかすらわからない。
 素直にそう答えていた。なんか、どんな嘘をついたところで、この男には意味がないと思えたから。
 グラスにウィスキーを入れてもらえるかな?
 男は素直な俺に微笑を浮かべると、そう注文する。
 あ、その棚の、真ん中、奥の…そう、その…ああ、それだ。そのウィスキーがいいね。
 言われるままに取って瓶を見ると、聞いた事のない銘柄で、アイリッシュウィスキーであることだけはわかった。
 タンブラーに半分ほど、そのウィスキーを注いで渡す。
 君も飲んだらいい。
 そう言われて、同じ状態のグラスをもう一つ用意した。
 男は手際良くその、ガソジーンとやらを使い、ウィスキーの入ったタンブラーに炭酸水を注ぐ。ガソジーンとは、炭酸水を作る機械らしい。
 男は自分の作ったそのウィスキーソーダを一口飲むと満足そうに肯いて、俺にも差し出した。
 一口、口に含む。常温のウィスキーと、炭酸。正直言えば、そんなに美味いとは思えなかった。でも、素朴な味だった。これはこれでありかもしんねぇ。
 どうだい?
 男は自分には馴染んだ味だからか、とても嬉しそうに聞いてくる。

「まぁ、あり、かも?」

 ゆったりとスツールに座りなおし、パイプと酒を堪能する男。

 君は随分と喧嘩慣れしてるようだね。グラスや酒を扱う手は繊細に動いていたが、その指の関節の曲がり具合など見ると、随分と誰かを殴り慣れているようにも見える。棒状の武器を扱ってもいるだろう? 掌全体が固くなっているのは、ただ握るだけ以外の扱い方もするから、だね。そして、長らく旅をしていた、ね? 

 次々と俺のことを当てていきやがる、こいつは、何者だ?

 さて、友人が来たようだ。もう一つ、グラスを用意してもらえるかな?
 男が空になったグラスにもう一度ウィスキーを入れるように行った後、立ち上がってドアを見た。

「いや…」

 この店には一度に一人の客しか…。
 そう言いかけて、言葉が止まる。

 カラン…

 ドアベルが、鳴った。

 ホームズ、こんなところにいたのか。
 入ってきた男は、最初の男を見ると安堵したような溜め息と共に言葉を吐き出した。
 この店はいい酒を入れているよ。一杯飲んでから出かけようじゃないか。僕の外套は持って来てくれたろうね、ワトスン君。
 俺は慌ててタンブラーにウィスキーを入れて、最初の男に渡す。
 男はさっきと同じ手順でウィスキーソーダを作ると入ってきた男に渡し、二人はそれを立ったまま飲み干した。

 さて、もう行こうか。ありがとう、君。お代はこれでいいかな?

 男たちは、カウンターにコインを一枚置くと、出て行った。

 きっちりお代をもらったのも、初めて、じゃねぇか?
 客に酒を作ってもらったのも…。
 今日は初めて尽くしの日、だったなぁ。

 ドアの外から、薄く色づいた少し臭気のある霧が、彼らと入れ違いに入ってきて、ドアはゆっくりと閉まった。



(`・ω・´)っ【設問:あなたの飼っている動物について教えて下さい。】


 仔犬、だな。
 クンクン煩く鳴きやがるから見に行ったら、小さな耳をピンと立てて、尾を千切れんばかりに振ってやがった。
 仕方ねぇから連れて帰ってやったんだが…相変わらず、煩ぇ…。
 思ったより忠実な犬が一匹。
 口煩ぇが、俺の期待には応えてくれる、番犬にはぴったりな奴だ。
 あとは…猫が一匹。
 誰とも馴れ合おうとせず一線を隔しているくせに、人恋しがりな、猫だ。
 夜行性なところなど、まさしく猫じゃねぇか。


 ん~…猫と犬と仔犬、か?
 拾った猫は、いつもどっか遠くを見てて、つかず離れず、俺たちの言動をどっか冷めた目で見てやがる。
 そんでも、最近は馴染んで来てんじゃねぇかなぁ…。
 犬かぁ…。うん、あれは犬だよな。
 どっか孤独を好んでるみてぇに見えて、実際は寂しがりなんじゃねぇのか?
 だから、仔犬がじゃれつくのを安寧として受け入れてっし。
 何よりも、まぁ…。群れのボス然としてんじゃね?


 犬と仔犬と猫、ですかね。
 僕は犬に、拾われました。どうにも馴染まず、最初は猫かな、と思ってたんですけどねぇ。壁を一つ壊したら、本当に犬のようで。ゆったりと尻尾を振りながら僕らの回りにいる感じなんですよね。
 仔犬は…本当に、好奇心旺盛で、見てて飽きませんよ。犬とじゃれてるところなんか、本当に微笑ましいんですよ。
 そして、猫…。プライドが高くて、孤高で。そして、よく眠るんですよ? ね、猫でしょう?


 え?
 俺、動物飼ったことねぇんだよなぁ。
 飼ってみてぇよな。
 虎なんか、カッコイイんじゃね?
 飼わせてくんねぇかなぁ…。







【番外】
「ん~…猫科の大型動物一頭?」
「狼、ですかねぇ…」
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