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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 街を歩いてたら、隣の男がふと、足を止めた。

「何見てんだよ?」

 街はハロウィン一色で。こんな街にまで異国の文化が流れ込んで来てるのか、と感心したようにそいつが言うから。
 そいつと同じようにそいつが覗き込んでるショーウィンドウを覗き込んだ。

「これ、ハロウィンとは関係ねぇんじゃね?」

 そいつが見てたのは黒猫のぬいぐるみだった。

「でもよ、目は紅いし、尻尾は二本。普通はこんなの置いといたりしないだろ?」

 言われてみれば、なんとなく、それもそうか、と思ってしまう。
 そいつがいつまで経ってもその猫から目を離さないから、俺もついつい一緒になって見てた。
 野郎が二人、おもちゃ屋のショーウィンドウを覗いてる図なんざ、端から見たら滑稽なんだろうな。

「もしかして、それ、欲しいの?」

 いつまでもそこから離れない連れに俺が少し意地悪な質問をすると、んなわけあるか! とようやく足を動かした。
 それに並んで歩きながら、俺は後ろを振り返り、そのぬいぐるみを見る。
 そいつはどっか隣の男に似た少しすました顔して、俺たちを見送っていた。





 ちょっと出てくる、と言って出かけて行った奴が、大きな包みを抱えて帰って来た。

「これ、やる」

 押し付けられたそれは大きさの割りに、軽くて。
 がさがさと包みを開けると出てきたのは黒い猫。

「欲しがってたろ、あんた」

 紅い目がまっすぐに俺を見る。
 二対のその目に俺は苦笑した。

「欲しかったわけじゃねぇんだけど、な…」

 まぁ、さんきゅ。
 そういって、紅い頭を撫でてやる。
 嬉しそうに目を細める様子が、本当に猫みたいだと、思った。

 最初は犬じゃないかと思ってたのに。撫でられるのが好きで、気がつくといつも傍にいて。
 でも、気ままさや我侭さ、一人でふらり、といなくなることもあって。

 猫みてぇだな、と思い直したところに見つけたあの猫のぬいぐるみが、どうしてもお前に見えたから、なんて言えるわけもなかった。

 ぬいぐるみの頭をぽふぽふと叩くとそれを見て首を竦めるあいつに俺は笑った。

「俺さ…」

 隣に来て、俺と一緒に猫の頭を叩きながら、紅い瞳を猫に向けてそいつがぽつり、と言う。

「この猫、あんたみてぇだと思ったから…」

 何、言い出してんだ、こいつは。
 二本の尻尾を絡めながらその紅い瞳が今度は俺を見た。

「なぁ、いつまで、俺たちこうやって一緒にいられる?」

 縋るような目に。
 俺は何も答えてやることはできなかったから。
 黙って、頭を撫でてやった。



 俺の色をした、あいつの瞳を持った、猫が、俺たちをじっと、見ていた。
 二本の尻尾を絡ませて。
 それはまるで…あいつの俺を慕う思いと俺の未練のよう、だった。

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夏風亭心太


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