最初はね、すごく怪しかったんだ。

　特に、三郎、って名乗ってた人。
　太郎って人はずっと不機嫌だったし、次郎って人はただの女性好き、四郎って人は大食いで。
　三郎って人だけ、なんか、掴み所がない、って感じだったの。

　でもね、お姉ちゃんが帰って来なかった時、一番に心配してくれたのがあのお兄さんだったんだ。

　すぐに探しに行こうって言って、ジープ出してくれて。

　マントを外した時の、三郎って人…八戒さん、カッコよかったなぁ。

　三蔵さんや悟浄さん、悟空さんがあんなだから、八戒さんはきっと、ああやってみんなをまとめて、外の人との関わりを…円滑、って言うの？　に、してるんだね。

　助けて貰ったお礼も言えなかったし、さよなら、も言えなかったけど。


　全部が終わったら、また来てくれないかな。
　妖怪の襲撃はなし、で。

　妖怪と人間が…

　共に旅をしているなんて…

　俺の望む理想を…目の前で簡単なことのように体現している彼ら。

　少年のような笑顔と、どこか世を斜に見たような笑顔。嘘か本心かわからぬ、それでも人当たりの良さそうな笑顔。
　笑顔など想像できない仏頂面の人間に従う、三人の妖怪。


　俺に…何かを感じたのは…仏頂面の人間と…翡翠の瞳。


　苦しそうに、悲しそうに…寂しそうに……。
　歪む４つの顔に…俺は……。

　最後に見たのは…子供どもと昼寝した、木々の翠。


　その翠に……俺の理想が叶うことを……願った。

　何？
　この雀呂様の話を聞きたい、だと？

　いいとも。なんでも答えてやろう。

　ふはははは…は…は…は？

　猪八戒？

　なぜ、奴が出てくる！
　俺様の話を聞きたいのではないのか！

　まぁいい。雀呂様は心が広いから、な。
　答えてやろう。

　沙悟浄よりは単純ではないな。
　だが、三蔵ほど複雑でもない。


　さて、もういいだろう。
　この雀呂様の凄さを聞くのだ！
　いくらでも答えてやろうではないか！


　え？
　あ、おい、待て！
　俺様の話を聞きたいのではなかったのか！

　おい、待つんだ！
　無視をするな！


　待て～～～～！！！（フェイドアウト）

　眼鏡はん、どすか？
　うち、あのお人は嫌いやわぁ。

　だいたい、三蔵はん、なしてあないな人たち…いや…妖怪たちを側に置いときはるんやろ？
　下僕や言いつつ、どう見ても対等な関係にしか見えへんし。下僕なら下僕らしくしたらええねん。
　うちとガトみたいに、ちゃんと一線を引かなあかんねん。

　うちかてただ嫌っとるわけやないんで。
　妖怪は滅するべき存在や。
　そう信じとる己の信念はそう簡単には変えられんだけや。

　三蔵はんと一緒におるあの妖怪たちはちょっと違っとることもわかっとる。
　斉天大聖と対峙した時の眼鏡はんの判断力には、感心したで。
　ちゃんと認めるとことは認められるんや、うちかて。

　せやけど、やっぱりあの妖怪たちは好きにはなれん。
　特に、眼鏡はんは…あの小賢しい口、少し、閉じててくれへんやろか。

　片眼鏡のオニィサン？
　知ってるけど…興味ないなぁ…。
　なんかね、鼻につくんだよね…あのオニィサン。
　頭がいいのは、先生だけでいいよ。

　ぼく、紅毛のオニィサンがいいや。

　あの紅毛のオニィサンで遊んでいいのは、ぼく。
　なのに、なに、あれ。
　みんなで楽しそうに遊んじゃってさ。

　そのくせ、息までぴったりあっちゃって。

　紅毛のオニィサンもそうだけど、なんでも持ってる三蔵とも仲良しだし。
　一人ぐらい、ぼくに分けてくれてもいいんじゃないの？

　片眼鏡のオニィサンはやっぱりキライだよ。