猪八戒か。

　いい男、だな。
　あいつがあんなに信頼してるんだから。

　あいつのあんないい表情を見たのは初めてだぜ。
　あいつの隣にいるべきなのは、俺じゃなかったってことか。

　正直、少し嫉妬もする。
　あいつにあの表情をさせられなかった自分が不甲斐なく思うことも、ある。

　それでも。
　あの男の横があいつの居場所ならば、俺には俺の居場所がある。
　それで良かったんだろうと思う。



　感謝、しているよ。
　あいつに居場所を、帰る場所を作ってくれた、あの男に。

　あいつを肴に、あの男と一杯やりたいもんだな…。

　なぁ、天ちゃん、髪、切ったの？
　風呂も入ったんだな、いい匂いがするっ。


　あ？
　え？
　あれ？

　天ちゃんじゃなかったんだ、ごめんね？

　八戒って言うの？

　俺は悟空！　よろしくなっ！


　うん、八戒は天ちゃんに良く似てるよ。
　笑顔がね、そっくりなんだ。

　あ…。今、俺を呼んでくれた、その声、言い方。それもそっくり。

　ん？
　天ちゃん？
　うん、大好き！

　だからさ、俺、八戒の事も大好きになると思うんだ！


　八戒は…俺の事、好きになってくれる？

　天蓬元帥なのか…あの男。

　言われてみれば…雰囲気は少し似ているやもしれんな。
　だが、元帥は元帥だろうし…あの男はあの男。
　同じ魂だと言われても別の人間だろう？
　同じと見るのは間違っているとは思わないか？

　それでも…元帥の最後を知っている身としては、元帥が…あの男で良かったと思わずにはいられぬな。


　天蓬元帥のように…良い仲間に囲まれている。
　すべてを隠すような笑顔より、敵を倒す修羅の顔より。
　心からの笑顔が似合う、あの男に。


　元帥、お前は…いい転生をしたな。




　願わくば…私もその仲間の一人でありたい、と思うよ。

　かわった、な。

　あいつが時折見せていた、どこか幼い笑顔が、ねぇ。
　あいつとは長い付き合いで、昔から知っているから、余計にそう思うのかも知れんが。

　飄々とした感じも薄くて、だが、作り笑顔はこいつの方が上手そうだ。
　自分を隠す術にも長けているように見える。

　それでも…こいつは…あいつなんだろう、な。

　柔らかい物腰に似合わぬ、頑固なところも。
　自分の信じることには一途ところも。



　いいんじゃ、ねぇか？

　こうやって繋がれていく生命（いのち）も。

　かわんねぇな…。
　あいつより、清潔感はあっか、

　でも、かわんねぇ。うん、かわんねぇよ。

　物腰柔らかなくせに、芯は強くて頑固でさ。
　頭の回転早くて、思考回路は複雑怪奇。

　そんでも、纏ってる雰囲気が…かわんねぇ。
　傍にいんの、落ち着く感じ？

　いいんじゃねぇの、かわんねぇってのも。
　あいつらしいじゃねぇか。



　俺も…まだ、あいつと肩を並べてっか？
　
　かわらずに…いつまでも…同じ時を…同じ空気を…共有してっか？