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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 藤の花が咲いていた。
 この花を見ると、あの女を思い出す……。





 鷭里とつるんで暫く経ったあの日は、雨、だった。
 いつもの喧嘩に明け暮れた。
 その日も喧嘩には勝ったけど、俺も鷭里も下手打っちまって、傷だらけで。
 ねぐらに着いてお互いを見やると、笑えるぐれぇにびしょ濡れで泥んこで血に塗れてた。
 高揚した気分のまま、二人で一緒にバスルームに行って。脱いだ服はゴミ箱に突っ込んで、熱い湯を浴びた。
「なぁ、悟浄、お前さぁ…」
 急に鷭里が声をかけてきて、背後から抱きつかれる。
 あまりに急なことに俺は動きを止めてしまった。
「な…何、しやがるっ!」
 鷭里の手が俺のに伸びてきて、俺は思いっきり鳩尾狙って肘を突き出す。
 それは予想された反撃だったのか、奴はそれを軽々と空いた方の手で受け止めると俺のをその手の中に納めてしまった。
「て、めっ! 頭、沸いてんのかっ!」
「どーだろーな。いいんじゃね? たまには」
 笑いを含んだ声で言われ、俺は完全に頭に血が昇った。
 つるんで喧嘩に明け暮れ、酒を飲み、煙草を吸い…奴は喧嘩に強い俺と組んで街を闊歩し、俺は全部忘れさせてくれる怠惰なこの毎日が楽だから、一緒にいる。それだけの関係。
 なのに。
 鷭里の手は俺のを扱き上げる。俺は抵抗しようと暴れるが、急所をしっかり握られていてはできることなんざたかが知れてる。
 結局俺は、鷭里の手の中に果ててしまった。
「は…はぁ……一体何のつもりだ、てめぇ……」
 思わすその場に座りこんだ俺は鷭里を睨み付けるように見上げた。
「お前さ、ちゃんとヌイてる? 最近のお前はよ、なんつーか、ブレてんだよな、喧嘩に。んで、タマッてんじゃねぇかと思って、手伝ってやったんじゃん。つか……」
 急にニヤニヤとイヤらしい笑いを浮かべる。
「お前、オンナとシたことねぇの? 俺の…ヤローの手コキで簡単にイッちまうなんてよ」
「う…うるせぇ!」
 んなもんにどう反応しろ、ってんだ。さらに睨み付けてやると、鷭里は楽しそうに笑った。
「図星、だな。よし、明日はオンナんとこ、連れてってやっか。ドーテー君なんてモテねぇぞ? さっさと筆下ろししちまえ?」
 兄貴然としたふざけた真顔で俺の頭を軽く叩くと、鷭里は一人でさっさとバスルームから出て行ってしまった。
 ったく…どーしろ、ってんだ……。


 俺はオンナが怖かった。
 夜毎にあのヒトが兄貴に…爾燕に抱かれて上げる嬌声が……。
 それが何の声か…わかりたくなかった。
 俺の知ってるオンナはあのヒトだけで…あのヒトが俺を見る目が…オンナが俺を見る目のすべてだった。
 虫けらでも見るような、目。
 憎いものを見る、目。
 憎悪の感情に支配された、目。
 悲しい、目。
 苦しい、目。
 そして……死人の……目。
 オンナが俺に向ける目は、きっと…。
 鷭里がオンナを連れてねぐらに帰って来ると、俺は目をあわせないようにした。
 あのヒトが俺に向けた視線のどれかを見てしまうのが怖かった、から。
 鷭里がオンナと部屋に引っ込むと、でかけるようにした。
 あのヒトの嬌声を思い出すのがイヤだった、から。
 そんな俺が、オンナと、だって……?
 そんなの、無理だ…。


 鷭里には…いや、誰にも…オンナが怖い、なんて言ったことはねぇ。
 言うつもりもねぇし、知られたくもなかった。
 だから結局、誘われるまま、奴の行きつけだという娼館に来ていた。
「……つ~わけで、こいつさ。まっすぐにオンナの顔も見られねぇぐれぇ初心な奴だけどよ、よろしく頼むわ、藤華(とうか)」
 下を向いたままの俺の視界の中にすらり、と細くて綺麗な指をした手が差し出された。
「行きましょう?」
 耳元で囁かれる声はすげー穏やかで。
 あのヒトの興奮したような声とあの嬌声しか知らない俺には新鮮だった。
 ゆっくりと顔を上げると、名前のままに薄紫に染められた髪の優しい顔があった。
 そして、俺の知らない、優しい目をしてた。


 オンナはあのヒトだけじゃ、なかった。
 鷭里が紹介してくれたオンナはずっと優しい目をしてて、優しい声をしてて…。
 記憶の彼方に消えてしまった、ずっと昔の…あのヒトではない、母親の胸に抱かれるようで。
 柔らかくて、あったかくて…幸せな気分、ってやつを存分に味わった。





 藤の花が咲いてた。
 この花を見るとあの女を思い出す。
 俺の初めてのオンナ。
 藤華、という名の、優しい娼婦のことを…。





 友人がしていたツイッターの診断を元に書いたSSを元に生まれました。
 以下がそのSS。



 雨の中、喧嘩してドロドロになった。
 俺もあいつも。
 勝った喧嘩だったけど、無傷ってわけにもいかなかった俺たちは傷の手当を名目に、一緒に風呂に入った。
 傷を丁寧に洗われて思わず声が漏れる。
「へぇ~」
 あいつが眼を眇めて笑った。
「なんだよ…しゃ~ね~だろ~が、痛ぇんだからよ…」
 俺の言葉なんか聞いちゃいなかった。
「その割りにゃ、色っぽい声出してんじゃん?」
 いきなり湯船の中に投げ入れられる。
「わっ! 何しやがっ……」
 じたばたと暴れる俺を押さえつけて、あいつも同じ湯船の中に入って来た。
「気にすんな」
 あいつの手が俺に伸びる。
「てめっ! 頭沸いてんのかっ!」
「ど~だろ~な~。いいんじゃね? たまには…」
 暴れる俺の体から思わず力が抜ける。
 拒否しても、殴っても蹴っても…あいつの手は止まらなかった。
 俺が果てて、抵抗をやめるまで。
「はぁ…はぁ…一体、何のつもりだ、鷭里っ」
 睨み付ける俺にあいつはしれっとした表情で言った。
「女の体験ねぇだろ、お前。今もすげ~早かったもんな。よし、明日女遊び連れてってやる。楽しみにしとけ」
 頭をポンポンと叩くと一人でさっさと出て行った。
 ったく…ど~反応しろ、ってんだ…。




 これが上のになりました(笑)
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夏風亭心太


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 猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
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