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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 八戒が用意したのは、笹だった。
「七夕ですからね」
 そう言って渡された短冊。
「願いを書いてくださいね? 飾りますから。悟空、短冊を書いたら、他の飾りを作るの手伝って貰えます?」
 楽しそうな八戒に、誰も何も言えなかった。
 悟空は楽しそうにしている。
 三蔵は相変わらず、苦虫を噛み潰したような顔で、押し付けられた短冊を見ていた。
 俺は……。

 八戒と悟空が笹を飾ってゆく。
 三蔵は興味なさそうに新聞に目を落としている。
 俺は手持ち無沙汰に短冊を見ていた。
「さ、三蔵も悟浄も。短冊、飾ってくださいね?」
 嬉しそうに綺麗に飾られた笹を満足そうに眺めながら八戒が声をかけてきた。
 少し考えて、俺はペンを取った。


『来年も一緒に過ごせるように』





 俺が書いたその短冊を覗き込んで、八戒がくすり、と笑う。
「来年だけでいいんですか?」
 その笑みが綺麗で。
 俺は八戒の短冊を見た。
『旅の目的が達成されますように』
 几帳面な字で書かれてあったその裏に。
『いつまでも紅と寄り添っていられますように』
 少し小さく控え目な字でそう書かれてあった。
 笹飾りの陰に隠れるように、三蔵と悟空の目を盗んで、八戒にキスをした。











「まだ来年もこの馬鹿げた旅を続けよう、ってのかこのバカッパが」
 三蔵が俺の短冊を見てバカにしたように笑う。
「なっ! 誰もそんなこと言ってねぇだろうが!」
「じゃ、悟空と一緒か。ガキだな」
 悟空の短冊を見ると『ずっとみんなでいられますように』と書いてある。
「そうでも、ねぇ…」
 わかってるくせに。こいつはいつだってそう、だ。
 俺が一緒にいたいのは。来年もこうしていたいのは…。
「俺はてめぇと一緒に歩いて行くつもりはねぇ。さっさと目的を成し遂げて、平穏な生活がしてぇだけだ。それにてめぇが付き合うってんなら止めはしねぇが、な。追いかけてきやがれ」
 短冊を笹に飾りながら、三蔵がぼそり、と言った。
「願い、なんざ星に頼むもんじゃねぇ。自分で成し遂げるもんだ」
 三蔵の短冊に書かれていたのは願い、ではなかった。ただ一言、『西へ』とあった。
 今のこいつにはそれがすべてなんだろう。そして、その後、は?
「それでも、一年に一度ぐれぇ付き合ってやるさ。てめぇの願いにも、な」
 織姫と彦星のように。それが喩え、一年に一回の逢瀬になってしまったとしても。
 追いかけてもいいんだと許された気がして、俺は少し微笑んで、短冊を笹に飾った。






 七夕の短冊で、58と53を。
 最初は同じスタートで、その後、分かれてますが…。
 読みにくかったですね;;;

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