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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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「悟浄、これ」

 差し出されたのは一着の衣装。広げてみると、黒いスーツにマントだった。

「何、これ?」

 どう見ても、吸血鬼かなんか、だよな?
 クリスマスには早いし、誰か、知り合いの誕生日かなんかだったっけ?

「着てくださいね」

 当たり前のように言われる、が…。

「なんで、よ?」
「ハロウィンだから、ですよ」

 当たり前のように返された。
 なんだ、それ?
 聞いた事あるような…ないような…。

「ハロウィン、知りません? 西国のお祭で、もともとはケルト民族のお祭だったと言われています。その後、カソリックの万聖節の前夜祭であることから…」
「いや、別に由来を聞いてるわけじゃねぇんだけど…」

 だいいちキリスト教とか、俺、わかんねぇし。つか、宗教とかそういうの、大して気にしちゃいねぇし?
 八戒はクリスチャンかもしんねぇけど。

「一体、何すんだよ? どっかで仮装パーティでもすんの?」
「悟空が、ね。一緒に回って欲しい、って言ってるんですよ」
「回る?」
「子供が仮装して、ご近所の戸口を回るんです。トリック・オア・トリート、と言って。そうすると、お菓子を貰えるんですよ」
「悪戯かお菓子か、ねぇ…」

 俺はちょっと考える。

「んじゃさ、つきあってやっから、それがすんだら…甘い菓子、くれる?」
「え? いいですけど…。でも悟浄、甘いもの、苦手じゃなかったですっけ?」

 きょとんとする八戒に、俺はにやり、と笑った。

「お前っていう甘い菓子を、さ…。俺は…甘い悪戯してやっからよ」

 耳元で囁いてやると真っ赤になったその頬に軽く口づけて、俺は渡された衣装に着替えた。
 いやぁ、今夜が楽しみだ。


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「悟浄、これ」

 差し出されたのは一着の衣装。広げてみると、黒いスーツにマントだった。

「何、これ?」

 どう見ても、吸血鬼かなんか、だよな?
 クリスマスには早いし、誰か、知り合いの誕生日かなんかだったっけ?

「着てくださいね」

 当たり前のように言われる、が…。

「なんで、よ?」
「ハロウィンだから、ですよ」

 当たり前のように返された。
 なんだ、それ?
 聞いた事あるような…ないような…。

「ハロウィン、知りません? 西国のお祭で、もともとはケルト民族のお祭だったと言われています。その後、カソリックの万聖節の前夜祭であることから…」
「いや、別に由来を聞いてるわけじゃねぇんだけど…」

 だいいちキリスト教とか、俺、わかんねぇし。つか、宗教とかそういうの、大して気にしちゃいねぇし?
 八戒はクリスチャンかもしんねぇけど。

「一体、何すんだよ? どっかで仮装パーティでもすんの? かわいこちゃん、来る?」
「悟空が、ね。一緒に回って欲しい、って言ってるんですよ」
「回る?」
「子供が仮装して、ご近所の戸口を回るんです。トリック・オア・トリート、と言って。そうすると、お菓子を貰えるんですよ」
「んじゃ、悟空だけでいいんじゃね? つかさ、あいつ、寺の子だろ~が。いいのかよ、キリスト教のお祭なんかに参加しちゃって」
「キリスト教のお祭、というわけでもないんですけどねぇ…。でも、悟空が寺にいることを知っている方も多いですから長安ではなくて、僕たちのいるこの街に来て、と僕がね、誘ったんですよ。いいでしょう、悟浄?」

 どこか嬉しそうに言う八戒に。俺は、まぁいいか、と承諾した。
 しかし、もともと妖怪の俺らが妖怪の仮装するなんて…なんの冗談なんだが…。

 暫くしてやって来た悟空を可愛い狼男に仮装させると、吸血鬼になった俺と魔女になった八戒との3人で街を回った。


 こいつらと出逢って、最初のハロウィンのこと、だった。




僕に生きる希望を与えてくれたのは貴方、なんです。
これが恋なのかどうかはわかりません。
それでも…僕は貴方にありがとうと言いたい。
僕を救ってくれて、僕の居場所を作ってくれて、愛してくれて…
ありがとう。
85


最初の出会いは最悪だったはずなのにな。
気がつけば、俺はいつもあんただけを見てた。
あんたが俺を振り返ることはねぇけど。
隣に立って、あんたと同じ道を歩く。あんたが見る夕日を見る。
すべてが終わったら、ちゃんと俺を見て?
それまで、肩を並べて歩むから。
53


背後を任せられるのは貴方だけ。
貴方がいてくれるから、僕は前を見て進めるんです。
ですから、これからもお願いしますね?
貴方を信じていますから。
僕の命、預けますから。
KT


てめぇがどこに行こうが誰と寝ようが関係ねぇ。
でもな、忘れんじゃねぇ。
てめぇは俺の下僕だ。
離れんじゃねぇぞ。
53


「雪ってなんだ?」
 そう無邪気に聞くから。連れだしたいと思ったんだ。
「櫻の花びらみてぇのが降ってくるんだけどな」
 それだけ言って、銀世界の中に放り出す。
 驚くその顔が綺麗で。
 伸ばす手に落ちる雪が溶けるのを興味深そうに見てる横顔に。
 全身で包みこんでキスを、した。
KK




「ねぇ、悟浄?」

 背後から絡まってくる腕と、心地好い重み。
 だらり、とソファの真ん中に座った俺の髪を優しく梳く指。
 首を逸らせて見上げると、八戒は嬉しそうに笑ってキスをしてきた。
 それを軽く受けてから、顔を逸らすと視界から見えなくなる瞬間のあいつの顔が少し寂しそうで。
 無言で少し横にずれて、隣をポンポンと叩く。
 するり、と滑りこんできた身体に腕を回すと凭れかかって来るその温もりに安心する。

「ねぇ、悟浄?」

 俺を呼ぶその声は優しくて。もっともっと聞いていたいから。

「ねぇ、悟浄?」

 何かを問いかける口調なのに、返事はしない。何度も名前を呼んで欲しいから。
 その問いかけるような口調に、意味がないことを知ってるから。

「悟浄……」

 どこか焦れたような声音になる。
 それでも黙っていると、いきなり伸びてきた八戒の手が俺の頬を挟み込んで、まっすぐに翡翠の瞳が俺を射抜いた。
 吸い込まれそうで、眩暈が、する。
 目を閉じる寸前、あいつの睫毛が微かに揺れて…視覚、という五感の一つを放棄した俺の唇と、舌の…触覚と味覚、二つの五感が研ぎ澄まされる。
 くちゅり、と湿った音と、どちらのものともわからぬ吐息に、聴覚までも侵される。

「悟浄……」

 石鹸の清潔感溢れる香りに混ざる、淫靡な香り。
 五感の中のたった一つを手放しただけでこんなにも…感じられる、こいつ。
 身体の力が抜ける。そのまま、押し倒される。

「悟浄…目を、開けて? 貴方の瞳を…もっと見せて?」

 耳元で囁かれるけれど。
 もっともっと全身でお前を感じたいから。
 目を閉じたまま…視覚を放棄したまま…八戒の背中に両腕を回した。






 ツイッターでの企画文にお付き合いいただいた方のリクを受けます~、と言っていて、最後までお付き合いいただいた(全文をお気に入りに入れるのが条件でした)方のリクエストで、甘いいちゃこらな85ということで。
 青柳涼サマ、ご笑納いただければ幸いです。


 雨が降ってた。
 日が照ってた。

 通り雨だろうと俺たちは走り続けた。

「なんだよぉ~。晴れてんのに雨降るなんて!」

 隣で悟空が忌々しげに空を見上げる。
 俺も一緒に見上げる。煙草は吸えねぇな、この雨じゃ。
 雨のせいか、前の二人はいつも以上に静かだ。

「こういうの、狐の嫁入り、っつ~んかねぇ…」

 顔に当たる日差しの暖かさと、秋の雨の冷たさ。
 俺は嫌いじゃねぇけどな。

「狐の嫁入り?」

 何を思ったか、悟空が急にきょろきょろと辺りを見回し始めた。

「何、やってんだよ。お前は…」
「だって、結婚式だろ? いっぱい美味いもん、あんだろ? 俺らも混ぜて貰おうぜ!」

 思わず、声が漏れる。
 ハンドルを握りながら、八戒がふきだしたのがわかった。

「悟空。狐の嫁入り、というのは、こうやって晴れているのに雨が降ってる状態を言うんですよ。昔の人はこんなかわった天気の時は、狐が結婚式でも挙げそうだなぁ、って思ったんでしょうね」
「そうそう。それによ、もしホントに狐の婚礼があったとして…料理、期待できると思うか?」

 隣の茶色い頭を小突いてやる。
 恥ずかしかったのか、照れたように、怒ったように悟空が小突き返してきた。
 雨の日は、三蔵が大人しいとそれにつられるように悟空も少し大人しい。
 言い返さない悟空の頭をそのまま撫でてやる。
 雨の日に騒がないのか、俺たちのルール。

「あ、ほら!」

 八戒が空を指差す。




 虹が、出ていた。
 八戒がジープを止める。

「雨、上ったな…」

 俺は空を見上げ、煙草に火を点ける。
 三蔵も煙草を咥えたのを見て、そのまま火を点けてやる。

 俺たちは暫く、そのままその虹を見てた。薄くなって消えてしまうまで。


 そんな、旅の日常。


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