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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 喫茶店の4人掛けのテーブルで。真ん中に灰皿一つ。
 なんで向かいに座んねぇんだよ、と言っても聞いてくれず、ただ微かに笑うだけで。
 そーいやこいつと二人でサテンなんざ初めてだと気づいて。
 急にこっ恥ずかしくなって、それを隠すようにタバコに手を伸ばせば。 つん、と鼻につく匂いがして、店の名前が書かれたマッチで火が点される。
 店の大きな窓の外は雨でけぶってて。
 その雨に降られて入ったここは、静かなJazzのかかるいい雰囲気の店で。
 香ばしい薫りがしてして、珈琲が運ばれてきた。
「てめぇと一緒なら…雨も…悪くねぇ…」
 そんな声が聞こえた気がして、はっ、と顔を見つめるが、あいつは何事もなかったように珈琲カップに手を伸ばし、薫りを楽しんでいるだけで。
 俺はただ、窓に映り込むその金色と、優しい色を浮かべてカップを見るその顔に、見惚れてた。



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 コトが終わって、女を腕枕してまどろんでた。
 頬に触れられ、意識が浮上する。
 女が悲しげな顔で俺を見てた。

「ん? 何?」

 寝返りを打って女の方に身体を寄せると、女は俺の目を覗き込んで聞いた。

「痛く、ないの?」

 俺の傷跡を女の指が、爪がなぞる。
 まるであの時の…俺の頬を掠めた刃物のようで…。



 コレは、アノヒトに与えられたもの。
 それが痛みでも苦しみでも…アノヒトの最後の思い出。
 傷が治って跡が薄れてくるたび、それをなぞるように何度も何度も自分で傷付けた。
 やがてそれはしっかりと跡になり、消えることはなくなった。
 アノヒトへの贖罪か、それとも恋慕か。
 どっちも、なんだろう。
 最後のあのときの、どこかホッとしたように逝ったアノヒトの顔が、忘れられない。



 その手を掴んで、俺はもう一度、女に圧し掛かった。





「おい猿!足、どけろ」
「猿じゃねぇ!悟浄こそどけろ!」
「しゃーねぇだろ~が、俺の足が長いのは俺のせいじゃねぇもん。その短い足の方が退けやすいだろ~が」
「おい、このバカコンビ。喧嘩はコタツの外でやれっ!」
「………相変わらずですねぇ…」
(三蔵一行)



「三蔵、お茶、ここに置きますね?」
「…ああ…」
 新聞からメモ離さぬ三蔵に。
 僕は向かい側から炬燵に入る。
 そのままそっと足を絡ませてみた。
「…なんだ?」
「いえ、なんでも。ただ、僕はこうやって貴方の体温で温められるので」
「炬燵に入ってんのにまだ温もりがいるのか?」
「ええ、心に温もりが」
(三蔵×八戒)




 座卓に布団が被せてある。
「にゃんにゃ、これ?」
 オレはそれから目が離せなかった。
 なんか呼ばれてる気がして思わず中を覗き込む。
 赤い光が満ちたその中は暖かかった。
 潜り込んで丸くなっていると眠気に襲われる。
 そこに突っ込まれてきた誰かの足。
 覚えのある匂い。
 思わずその足にしがみついて眠った。
(にゃんれん視点)
注:にゃんれんとは、おいらがツイッターで作って管理している捲簾に似た猫の半ボット。



 小包が、届いた。
 差出人の住所はない。ただ、彼の独特な字で名前が書いてあるだけだった。
 西への旅が終わり、元居た町に戻って。
 そのまま彼は消えた。

「ちょっと出かけてくるわ」

 そんないつもと変わらぬ口調で。僕はそれを黙って見送った。彼がいつ戻ってもいいように。
 彼の居場所はここだと信じているから。

 小包を開けると、彼色のタンブラーが入っていた。
 稚拙な文字で「俺の代わり」とか書いてある。
 その文字に僕は苦笑する。

「貴方のかわりなんて…いりませんよ。僕は、貴方がいいんです…」

 その小さなメモを握り潰す。 
 その真新しいタンブラーにコーヒーを満たしてみる。部屋中にコーヒーの香り。  

「お、早速使ってくれてんだ」

 ドアが開く音と、彼のタバコの香りが、した。

「お帰りなさい。貴方も飲みます?」
「そう、だな。んじゃ、これに淹れてよ」

 出されたのは僕色のタンブラー。僕と彼の時間が流れ出した。 






 こめかみに銃口を押し当てる。
 身を守るため、いや、いつでも自分を終わらせることが出来る、そのために手にした銃の重みを、今は大して感じない。
 あのころに比べると楽にこうしていられる。
 今ならあの頃のように躊躇なく、指が震える事もなく、この銃爪を引けそうだ、とふと思った。

 この寺に来て5年。聖天経文の情報はない。三仏神の雑用を押し付けられる毎日に飽き飽きしていた。
 進展のないこの情況にイライラする。ぬるま湯に浸かったかのようなこの情況に…ふと、自分がなんなのかさえわからなくなることがある。
 このまま銃爪を引くか…。
 悟空は悲しんでくれるだろうが、他の連中は清々した、と思うだろう。
 目を閉じ、ゆっくりと指に力を込める。

 急に張り飛ばされた。
 目を開けると燃える様な赤い色が視界を覆っていた。

「てめぇ、何しやがる!」

 そいつを押し退け立ち上がる。まっすぐに見つめる紅い瞳が痛くて視線を逸らした。

「それはこっちの台詞だ! あんた、何しようとしてた?」

 まっすぐな感情を思いきりぶつけられた。怒りに燃える瞳がまっすぐ見ているのを感じる。

「俺の命だ。俺がそれをどうしようと勝手だろうが…」

 そいつの顔も見ずに俺は手に握ったままの銃を見つめる。

「ふざけんなっ!」

 頬が熱くなる。それから、ぱんっ、と乾いた音がして叩かれたのだと知った。

「てめぇは…死にたいと思ったことはねぇ、のか…?」

 らしくない、と思う。が、気付いたらそう聞いていた。

「……………ある…」

 辛うじて聞き取れるほどの声で、目線を落として答える。けどっ! 落とした視線を上げて声を大きくして、そいつはしっかりと俺を見た。

「俺の命は助けられた命だから! 俺の両親は心中の時、俺を道連れにしなかった! あのヒトは野垂れ死にしてもおかしくなかった俺を育ててくれたからっ! 殺されそうだった俺を、兄貴は殺人者になってまでも救ってくれたから! だから、俺は死なねぇ!」

 荒ぶった声でそれだけ言うとそいつは、ふっ、と息を吐き出し、寂しげに俺を見た。

「…あんただって、そうじゃ、ねぇのか?」

 ふい、と視線を逸らし、そいつは俺に背を向ける。

 そう、だ。俺は救われた。俺が生きるために、どれだけの人がその命を亡くしたか…。
 そして……。

 遠ざかる背中が部屋から出る前に俺はそいつを背後から抱き締めていた。

「…救われた…てめぇに、今…」

 そのまっすぐな感情に。その温もりに。





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