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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 それは…きっと、愛だの恋だのそんなものではないのだと、思う。言ってしまえば、それは…執着、なのだ。


 俺は、八戒がシンクの前に立って食器を片付けているのを、缶ビールを片手に見ていた。火の点いたタバコを灰皿に放り込んで立ち上がる。
 たった4センチの身長差。肩から首に腕を回して抱きしめるには、背伸びをしなけりゃならない。
 それでも、俺はそうして八戒に背後から抱きついた。
「悟浄…?」
 八戒が驚いたように食器を洗う手を止める。嫌がる風もなくそのままでいてくれることに、俺は少し自惚れてもいいのだろうか?
「どうしたんです? 酔っているんですか?」
 酔ってる? そうかもしれない…きっと、こんな気持ちになったのも、こんなことをしてみたくなったのも、これから言おうとしていることも…みんな、酒のせい…。
「なぁ、八戒…一度しか言わねぇし、聞こえない振りをしたって、すぐに忘れたってかまわねぇ…」
 八戒のうなじに頭をくっつけて呟く。
「えっ?」
 身じろぎをして俺を引き剥がし、振り返ろうと動くその身体を拘束するように俺は腕に力を込めた。そして、耳元に口を寄せて囁く。
「好きなんだ…」
 八戒が一瞬硬直したのがわかる。が、そのあとには…きっといつもの静かな笑顔…
「…ホントに…あなたって人は…」
 少し呆れたような声色。子供みたいなことを言いますねぇ、と笑う声。
「…僕も、嫌いじゃありませんよ? そうでなきゃ、同居なんてできないでしょう?」
 だからね、放してください、片付け物、終わらないでしょう? 自分の首に回された俺の腕を水で濡れた手で軽くポンポンと叩いた。
 安心したのか拍子抜けしたのか…俺は自分自身にもわからない気分で、言われるままに八戒を開放すると、頭を冷やすために外へ出た。


 それはきっと、執着。俺と同じように、俺のこの紅い髪と瞳に、血の色を見た男への…言葉で縛り付けて、俺の側から離れてしまわないように…。









 サイトより。
 恋人未満、な悟浄と八戒。

 2006年12月18日UP。
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