くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
Category:最遊記
「あ~…!」
悟浄が食後の一服をしようとして、唐突に素っ頓狂な声をあげた。
「どうしました、悟浄?」
八戒が悟浄の情けないような声に何事かと聞く。
「煙草が、ねぇ…」
「おやおや…」
八戒は苦笑いをすると立って食堂のレジへと行き、何か聞いてきた。
「この店には煙草は置いていないそうです。それから…小さな村なので、コンビニもないと…。明日の朝、お店が開くまで禁煙ですね、悟浄」
くすくすと笑いながら言う八戒を悟浄は睨み付けたが、こればかりはどうしようもない。
「なぁ…さん…」
「やらん」
全部を言う前に言下に断られてしょげて見せるが、結果は変らずで、悟浄は不貞腐れたように最後の煙草に火を点けた。
食堂を出て、宿へ向かう途中。イライラしながら歩いていた悟浄は自動販売機を見つけた。
「やった、自販機あるじゃん…助かったぁ…」
走るようにして自動販売機の前に行くと、ポケットの中を探って小銭を入れ、くすんだ水色の煙草のボタンを押す。
『タスポをタッチしてください』
無表情な女性の声。悟浄は軽く首をかしげ、もう一度ボタンを押すが、同じアナウンスが流れるだけ。
「なぁ、八戒…タスポってなんだよ……」
その頃になってようやく追いついてきた三人に向かって情けなさそうな顔をした悟浄が、一番物事に精通していそうな八戒に向かって困り顔で聞いた。
「成人識別カード、ですか…。煙草とパスポートをかけて、タスポ、と言うらしいですね」
「持ってる?」
「僕が、ですか? あるわけないじゃないですか、僕は煙草吸いませんから」
ニッコリと笑って言われればその通りで。今度はその視線を三蔵に向ける。
「必要ねぇもんは持たねぇ」
いつもの不機嫌な表情で、これ見よがしに煙草の煙を悟浄に吹きかけた。
「三蔵、お前な…わざとやってるだろ…」
じろり、と睨んでも三蔵は知らん顔で煙草を吸い続けている。ちょっと縋りつくような視線を悟空に向けるが、ため息をついて諦めたように返金ボタンを押した。
「悟空は…成人じゃねぇもんなぁ…」
「悟浄、ここに申し込み用紙ありますよ?」
目ざとく自販機に備え付けられている用紙を発見した八戒が手に取ってみる。
「写真と…身分証明書が、いるみたいですね…」
「おい、宿に帰るぞ」
用紙を前に話し始めようとする悟浄と八戒に声をかけて歩きだす三蔵を悟空が追って行き、八戒はその用紙を持ったまま、後を追う。
悟浄は暫く恨めしそうに自販機を眺めた後、仲間の後を追った。
4人部屋で落ち着くと、八戒と悟浄は改めてタスポの申し込み用紙に目を通す。
「写真はいいとして…身分証明書? 俺、住民票なんてあったかな?」
困惑したように悟浄は呟く。手が無意識に煙草を探り、ないことに気付くと舌打ちをした。
「八戒は? 免許とか持ってるんだろ?」
「僕は、無免許です」
しれっと言う八戒。
「車なんてこの桃源郷じゃ見かけないじゃないですか。当然、自動車学校もないですし、免許センターもないでしょう?」
言われればその通りなのだが、あまりに悪びれない様子に悟浄はため息を吐いた。
「大体さ、その身分証明書ってなんなんだよ?」
悟空が二人の手元を覗き込んで聞いた。
「免許証、保険証、年金手帳、住民票、などのことですね」
「俺達には縁のないモノのような気がする…」
「僕らの中で持ってそうなのは…」
一人、我関せずで新聞を読んでいる三蔵に三人の視線が向く。
「三蔵と悟浄のために、一枚持っていると便利なんですけど、ねぇ。ねぇ、三蔵?」
八戒が立ち上がって申し込み用紙を持ち、三蔵の前に立つ。差し出された用紙を一瞥した三蔵は、悟浄に見せびらかすように新しい煙草に火を点けると、ふん、と鼻を鳴らした。
「必要ねぇ…。だいいち、こんなところで二週間も足止め食らってたまるか」
最後の一行に目を留めた三蔵が切り捨てるように言ってそれ以降は取り付く島もなく、話は立ち消えになってしまった。
それから暫く後…。
またまた小さな村に滞在した一行。
遅くに到着して、閉店寸前の食堂でやっと食事にありついた後のこと。
「……八戒、煙草を寄越せ」
食後の一服、と袂を探った三蔵が煙草のないことに気付き、八戒に声をかけた。
「…夕方にお渡ししたので最後だって、言いませんでしたっけ?」
困ったような八戒の顔に小さく舌打ちをして、三蔵は悟浄に手を出す。
「おい、河童。お前の煙草で我慢してやる。出せ」
しょうがねぇなぁ、と思いつつそれを声には出さずに悟浄は三蔵に煙草を一本渡す。
黙って火を点けて、一口吸った三蔵は一言…。
「…まずい…。八戒、煙草、買って来い」
「お前なぁ…」
じろりと睨む悟浄を無視して三蔵は八戒に命じるが、近くにコンビニもなく、店にマルボロは置いていないと言われ、八戒は苦笑してそれを告げる。
「……宿に行くぞ…」
宿のフロントにあるのではないか、と微かな望みがその声に聞こえ、三人の従者は苦笑して立ち上がった。
宿へ行く道の途中。
「お? 自販機があるぞ、三蔵、マルボロもあるみてぇだ…」
目敏く悟浄が見つけ、声をかける。
「八戒、買って来い」
三蔵に言われ、八戒は自販機に向かった。
『タスポをタッチしてください』
聞き憶えのある、無表情な女性の声。
「三蔵…」
大きくため息をつく三蔵に八戒は苦笑する。
三蔵一行がこの小さな村に二週間滞在したことは想像に固くない。
なんか、不満(^^;
いまいちノリが悪いですが…。これって、文章よりも絵でみたいよなぁ(^^;
おいらは持ってます、タスポ。何度か使いましたけど…あのアナウンス(?)やたらと大きな声で、好きくないですね…(--;
2008年05月25日UP。
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夏風亭心太
酒、煙草が好き。
猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
こんな奴ですが、よろしくお願いします。
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