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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 あの子がうちに来てから十五年もの月日が経ってしまった。
 子供のなかった私たち夫婦は、まだ生まれて間もないあの子を引き取り、本当の我が子のように育てて来たつもりだ。
 生まれてすぐに両親を相次いで亡くし、身寄りのないあの子は不憫で…とても愛らしかった。妻はあの子をそれはもう、目に入れても痛くないくらいに可愛がっていた。私ももちろん…
 あの子が5歳になったばかりの頃のあの事さえなければ、今でもあの子を普通の子と信じつづけていただろう。
 そう、あの日も今日と同じように赤い月が出ていた。
 あまりの美しい満月に私はあの子と散歩に出たのだ。
 あの子の様子がおかしくなったのは…普段から遊びなれている公園に差しかかった時だった。急に私の手を振りほどくと公園の中に走り込んだのだ。
 慌てて追いかけたが見つからず、焦っていると植え込みの中で、犬がキャンキャンと恐れをなすように鳴く声が聞こえた。私はその植え込みに恐る恐る近づきのぞき込んだ。そこで目にしたものは…。
 夢だと思いたかった…誰にも言うことなどできなかった。あの子と本当の親子のように仲良く過ごす妻を見ていると、妻にさえ話すことはできなかった…。
 けれど、そのせいで私たちは確実に死へと近づくことになった。
 あれ以来、天空に赤い月がかかるとあの子はおかしくなった。そして、近所から、犬が、猫が、一匹、また一匹と減っていった。そして、わが家の庭で見つかる、干からびた動物の死骸…。
 とうとう、あの子は妻にまで手を出していた。妻は知っていて、黙ってあの子に自身を貪らせていた。
「あの子は…自分が何をしているのか…何なのか…多分気づいていません…。だから…あなた…」
 彼女の死の間際の言葉を、私は聞き取ることはできなかった。
 そして、妻はまだこの家の中で眠っている。完全に干からびてしまったその体は腐敗することもなく…。
 妻が死んで3カ月が経とうとしている。私はこうして筆を執っているが、頭は重く朦朧としている。もう何日も何も口にしておらず、あの子に与え続けている…。
 誰か…あの子が…己の存在が人ではないと気づく前に殺してやってほしい…。
 今夜も赤い月が空高く昇っている…美しい満月だ…。背後には…あの子が…。





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