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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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ワトスン先生が朝起きだすと、ホームズさんは珍しく、もう朝食のテーブルに着いていました。
「おはよう」
 挨拶をしてワトスン先生は食卓に着きました。呼び鈴を鳴らしてハドソン夫人に朝食を持って来てもらう間、ワトスン先生は新聞を手に取りました。
 いつもならば、ワトスン先生が新聞を読んでいると、
「何か面白い記事はないかい?」
と、聞いてくるホームズさんが、今日は黙っています。不思議に思いながらも、ワトスン先生は新聞を読み続けていました。
 そのうち先生の分の朝食も出来まして、彼も食べ始めます。
「キミが好きだ」
 いきなり、ホームズさんが、思い詰めたような声で言いました。
 ワトスン先生は慌てます。それはそうでしょう。ワトスン先生もホームズさんも男なんですから。特に女好きのワトスン先生には、男からの告白なんて気持ち悪い物以外の何物でも無いのです。
 大きな音を立てて、ナイフとフォークをお皿の上に落として、ワトスン先生は立ち上がりました。
「な…何のつもりだ…ホームズ…私は男だよ。それに君も…その気持ちが英国紳士にあるまじき感情だと言うことを知らない訳でもあるまい…」
 ワトスン先生は逃げ腰になりながら、必死に言います。そうですよ。男と出来た、なんていうことになったら一大事です。そんなスキャンダラスな事になったら、医者としての身分が無くなり、そしてなにより、もしかするとワトスン先生にはこちらの方がこたえるかもしれませんが、大好きな女に白い目で見られて、相手にされなくなってしまいます。それでは、ワトスン先生にとって、人生がなんたるやわからない、といった状況になるに決まっているのです。それだけは避けなければいけません。
「僕は、キミが好きなんだ」
 ホームズさんは、もう一度言いました。
「ホームズ、君がそんな目で私を見ていたというのなら、私は今すぐ、この下宿を出るよ」
 最終手段です。ワトスン先生はそう言うと、自分の部屋へ荷物をまとめに行こうとします。
「待ってくれ、ワトスン。僕はキミが好きだと言っているんだ」
 そう言いながらホームズさんは、その手に持った物をワトスン先生に見せたのです。
 ホームズさんの手には、エッグスタンドに乗ったゆで卵がありました。
 それを見たワトスン先生は、大きく溜め息をついて、食卓に戻りました。
 それ以降、ワトスン先生は、ホームズさんの前でゆで卵を食べようとはしなくなりました。ホームズさんが、物欲しそうな目で見ているような気がすると思ってしまうからだそうです。











1990年 JSHC・マロニエ支部会誌に寄稿
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