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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 煙草が美味い。
 討伐に予想外に時間がかかってしまった。
 見上げた夜空の真ん中を薄っすらと白い光の帯が走っていた。
 
「天の川、ですねぇ」

 隣からも煙が立ちのぼる。

「下界から天界は見えねぇのに、なんで、あの川だけ見えんだろうな」

 天の川、そんな名前じゃなかった気もすっけど、あの流れは見覚えがある。この下界にある海にも似た対岸すら見えない大きな、河。
 下界から見上げると、あんななのか。
 夏のこの季節だけ、こうして綺麗に見えるんだという。

「僕の両親はね、織姫と彦星なんです」

 しごく真面目な声に、思わず噎せる。

「んじゃさ、お前の誕生日って、5月17日?」

 どの暦を採用するかによりますねぇ。しれっと言われる。
 それが本当なら、とんだ落とし胤だが、そんなことありえないってわかってる。
 いつものわけのわかんねぇ冗談だ。

「下界では七夕になると短冊に願いを書いて、笹に飾るらしいですよ」

 天蓬との会話はいつもこんな感じだ。
 何が話したいわけでもないけど、何かを話したい。
 討伐の後のこの一時が日常に戻るための儀式のようになっていた。

 時間の流れが緩慢で全然動きもしていないようにも感じる天界で。年に一度の逢瀬を待つ恋人同士に下界の人間は何を祈るのだろう。

「僕らも、書いてみません? 短冊」

 どこから取りだしたのか。一枚の短冊とペンを渡された。

 あの河の畔の恋人に願うなら……。




** *** **





 手渡されたのは短冊とペン。
 なんだよ、これ。

「こういうイベントには乗っておくべきでしょう?」

 にっこり笑って言われたら逆らえねぇ、よな。

「ねぇ、悟浄?」

 書こうとペンを持ったところで声をかけられた。

「貴方の願いは、叶いましたか?」

 まだ書いてねぇし。
 言いかけて、ふと、思い出す。

「叶った、んじゃね?」

 こうして隣にいるんだから、さ。



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夏風亭心太


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