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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 嬉しそうに肉まんを頬張りながら、無邪気な笑顔で三蔵を見上げる悟空。


 それは、春らしい気温が続いていた毎日の中、急に寒さが戻ったある日のことだった。

 なんとか寺での自分の居場所を確保して、それでも三蔵の傍にしかいる場所がなくて…不安な思いに押し潰されそうになっていた悟空を見るに見兼ねて、三蔵は悟空を街に連れ出した。

 14~5歳に見える悟空は、けれど、その姿よりもずいぶんと幼いように感じる。
 三仏神の言っていたことが本当だとすれば、彼はその見た目の年齢よりも500年は多く生きているはずだが、とてもそんな風には思えなかった。

 三蔵は呼ばれた…声なき声に呼ばれ、悟空を手元に置いた。

 それが吉だったのか凶だったのか、今はまだわからない。
 ただ、師である光明を失ってから初めて、誰かが傍にいることに違和感を感じない、そんな相手が悟空だった。
 自分にはないと思っていた、保護欲というやつが目覚めたのかもしれない、と自嘲気味に思っている。


「さんきゅな、三蔵」

 にこにこと言う悟空に三蔵は苦虫を噛み潰したような顔をした。

「そんなに肉まんが嬉しいか…」

 餓鬼が…煩そうに顔をしかめる三蔵の顔を悟空はまっすぐに見上げる。

「これも美味いし、嬉しいけどさ…」

 いくつか買ってもらって袋に入っている肉まんを一個取り出し、三蔵に差し出す。

「三蔵も食う?」

 是とも否とも言う前に押し付けられた。期待の篭った眼差しで見つめられ、仕方なしに一口かじると嬉しそうに悟空が笑顔を見せる。

「な? 美味いだろ?」
「…ああ…」

 勢いに飲まれたように答える三蔵に、ふと、悟空は真面目な表情を見せた。

「…さんきゅ、な…三蔵…」

 もう一度同じ言葉を…今度は真摯に、呟くように言った。

「…俺を見つけてくれて…一緒にいてくれて…」

 急に何を言い出すんだ…三蔵は照れ臭そうに悟空から視線を外し、もう一口、肉まんをかじる。

「今日は、さ…人に感謝をする日なんだって、寺で誰かが言ってたからさ…」

 こっちも照れ臭そうに真っ赤になりながらそう言うと、悟空は何個目かの肉まんにかぶりついた。


 ああ、そういうことか…。
 三蔵は合点がいったように頷いた。

 だったら、俺もお前に言わないとな…悟空…。
 俺の傍に来てくれてありがとう…太陽の存在を思い出せたのは、お前のお陰だ…。


 声に出しては言わないけれど…


 今日は[ありがとう]の日。


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