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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 世界が薄紅に染まっている。雨が降っている。
 この世の春を謳歌していた薄紅の花が散っていく。

 物心ついた頃から、俺はこの花が苦手だった。
 なぜか、いつも、その花に何かを迫られているような気がしていた。
 長じて、それは焦燥感だと言うのだと知った。
 何をそんなに焦るのか…ただ、何か約束していたような、そんな気がして。
 その約束を守れない自分が不甲斐なかったのかもしれない。

 ハラハラと散る花弁と、パタパタと落ちる雨。
 眺めていると、花弁がパタパタと落ちているような錯覚に囚われてしまう。
 手を伸ばして花弁を掌に納めればしっとりと水を含んでいて雪片のようにも感じられた。
 雪はすべてを隠してしまう。
 世界を真っ白に染め上げ、踏みにじられて…いずれは融けて、隠した物を再び見せる。
 それならば、この花弁は?
 何かを隠して…踏みにじられて土に返り…
 再び、何かを見せてはくれない、か。
 そのまま、土に返すだけ…。
 焦燥感の原因など、いつまで経っても見せてはくれない。
 それでも……
「悟浄、そろそろ行きますよ」
 呼ばれて振り返る。
 奴らと出逢って、その焦燥感はずいぶんと薄らいだ、気がする。
 掌の花弁を払い落とすと、持たされた大荷物を抱えなおし、傘を差して待つ、薄紅の後に待つ色の瞳を持った男と肩を並べた。
 足元で花弁が踏みにじられ、きゅきゅっ、と小さな音を立てた。
 もうすぐ、薄紅の季節は終わりを告げる。
 焦燥感はいつ、完全になくなるのだろうか……。


『またいつか…満開の櫻の樹の下で……』


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夏風亭心太


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