忍者ブログ
くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
[232]  [231]  [230]  [229]  [228]  [227]  [226]  [225]  [224]  [223]  [222
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



 ひらり、ひらり、と。
 白いものが舞っている。
 それはまるで…天界の櫻のよう、だった。

 冷え込んできた毎日に着る服がなくて、悟浄のセーターを借りた。
 真っ白なタートルネックのセーターは暖かいが、あいつの背が高い分だけ袖が余って、手の平が隠れてしまうのが、癪に障る。
 それでもそれを手放せないほどには寒かった。

 服を買いに行くか?
 そう言われたが、断った。多分、長らくこの場所に留まれないから。
 それでも一緒に過ごしていく毎日の中で、俺のものは増えていた。
 こうやって降り積もって行く雪のように。

 あいつの中にも、こうやって積ってゆくのだろうか、俺との思い出とかいうやつが。

 セーターから出した手の平に雪片を受ける。
 それは一瞬だけ刺すような冷たさを残して、消えた。

「雪、珍しいの?」

 背後から声をかけられる。
 振り返ると、悟浄が寒そうに肩を竦めて立っていた。

「そう、だな。俺が住んでる場所では雪は降らないから、な。櫻の花弁が雪のように振るぞ」
「へぇ…それ、見てみてぇかも」

 隣に並んで雪を見上げる悟浄の横顔を見る。
 つめてっ、と顔を顰めて、笑っていた。

 手の平に落ちて溶ける雪を見ている。
 一瞬の冷たさのあと、何も残さず消えるその雪片に。

 こいつの前から消える時は、俺もこんな雪片のように消えられたら、と思った。

 いつまでも続かぬこの毎日を。
 今だけは、積った雪につける足跡のように。
 ここにいた記憶を刻み付けて。
 降り積もる雪のように。
 思い出を重ねよう。



PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
09 2025/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
夏風亭心太


 酒、煙草が好き。
 猫好き、爬虫類好き。でも、虫は全部駄目。
 夜が好き。月が好き。雨の日が好き。
 
 こんな奴ですが、よろしくお願いします。
フリーエリア
最新記事
リンク

 最遊記の二次創作投稿サイト。
夏風亭心太も参加しています。


 ここの素材をお借りしたサイト様。

Atelier EVE**Materials**
 バナー素材をお借りしたサイト様
最新コメント
[11/19 https://www.getjar.com/categories/all-games/action-games/Rules-of-Survival-Cheat-960889]
[11/16 https://truoctran.com/viet-nam-vs-malaysia-tip-keo-bong-da-hom-nay-16-11]
[11/14 سنسور صنعتی]
[06/27 aypo]
[08/27 そういち]
カウンター
バナー

 ここのバナーです。ご入用の方はどうぞ♪
忍者ブログ [PR]