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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 愛することを知らない。
 愛されることを知らない。
 信じることを知らない。

 それでも生きていける。
 身体の温もりだけなら、酒場で隣に座った女に強請れば、一夜の宿と一緒に手に入れられた。

 それでいいと思ってた。
 それが孤独だってことなんて気づいちゃいなかった。



 俺たちは、出逢うべくして出逢った。
 雨に憂う八戒と三蔵。
 雪を怖れる悟空。

 皆が孤独を知っていた。
 孤独の中で生きていた。

 磁石のS極とN極が引き合うようにして、俺たちは出逢い…一つの場所に流されているのだろう。
 どこまで流されるのか…どこまで行けるのか…。



 心の中から、ぽろり、と小さな何かが落ちた。
 少しだけ、心が…小さく小さく、脈を打った。

 この欠片がもっともっと落ちて、心が大きく脈打つことが出来た時、俺は愛することを愛されることを知る。
 信じる心を持つことが出来る。

 落ちた目に見えないその何かを拾った。
 それは…

 孤独の欠片。



 願わくば、この心の孤独がすべて溶けてなくなるまで…

 ……こいつらと旅を続けたい……





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 小さな池のほとりで休息を取った。
 ちびっこ猿は相変わらず「腹減った~」って叫んで八戒に飯をねだってるし、生臭坊主はどっから出したのか、木陰で新聞を読んでる。
 しっかし、三蔵、新聞読む時だけ眼鏡かけっけど…あれ、老眼鏡か?

 俺はすることもなく、池の回りを咥えタバコでぶらぶらしてた。

 池の水面を覗き込むと紅い色を目の端に捕えた。

 自分が映りこんでいるのかと思った。

 目を凝らすと水面に花が咲いていた。
 誰かが落とした血の色のように、見えた。

 俺の心は…この花と同じ…ただ、その場に浮いて、咲いている事だけしかできない。
 この紅い色を誰かの心に映し、ただ、咲いている。

 池の水がなくなれば、この花もなくなるのだろう。
 この池があったことすら忘れられてしまえば、この花など、最初からなかったも同じ、なのかもしれない。

 俺もこの花と変らぬ、そんな存在なのかもしれない。

 だが、池はここにあって、花はここで咲いている。
 俺も生きていて、ここにいる。

 この池みてぇに静かじゃねぇけど…俺は俺を生かしてくれる、この花にとっての池のような存在の仲間がいる。

 純真な心で…あいつらに礼を言える日が来るんだろうか…。

 池の向こうで飯が出来たと俺を呼ぶ声がした。

 日が沈む。今夜はここで野宿だろう。
 睡蓮は静かにその花を閉じた。



睡蓮…花言葉「純真な心」









 さぁさぁと音がする。
 雨が降っている。

 細く開けた窓からタバコの煙を逃がしながら、ぼんやりと雨の音を聞いていた。

 あいつは部屋から出て来ない。
 俺は声をかけない。
 かける言葉を持ってねぇから。

 あいつが自分でなんとかするしかないことだから。

 ノックが聞こえる。
 ドアを見るとあいつが入ってきた。

「湿っぽいですねぇ」

 入ってきたあいつの顔が沈んでいないことに安堵する。

「触角、萎れてませんか?」

 入ってくるなり、それかよ…。

「触角じゃねぇ~!」
「でも、それを切ってしまうとまっすぐ歩けなくなる、って噂ですけど?」
「んな訳あるかっ」

 くすくすと二人で笑う。
 でも、その時のあいつの瞳の中に…瞑い色は残っていた。
 俺は………



 しとしとと雨が降っている。
 宿の細く開けた窓からタバコの煙を逃がしながらぼんやりと外を見ていた。

 雨が降ると足止めだ。
 ぼんやりと過去のことを思い出すぐらいしかすることもねぇ。

 部屋の戸をノックする音がする。

「ぅんぁ?」

 間の抜けた声をあげると、八戒が入ってきた。

「触角萎れてませんか?」

「俺の触角は鋼鉄製だから大丈夫」

 あの時、瞑い瞳の色に明かりが差したのは、確か、この一言だった。
 苦しく辛い時でも、人はおかしければ笑う。
 それが、生きる、ということ。

「食事ですよ」

 くすくす笑いながら言う八戒に、俺は片手を上げて応えると、並んで部屋を出た。



 雨はまだ、降っている…。




 ジープのいつもの席。
 山の中を走っていた。
 曇って湿気を帯びた風。気温が高くないせいか…心地好い。
 流れる風景をぼんやりと見ていた。
 新緑の山々が背後へと流れる。
 その中に、薄紫が交じった。
 藤、だ。
 遠くの山に視線を送ると、山の一角が藤色に染まっている場所があることに気づく。

 綺麗な紫だ。
 優しい…色…知り合ってすぐの頃…百眼魔王の城跡で八戒のために経を上げたあの時の三蔵の瞳の色を思い出した。

 あれから、どれだけの時間が経ったのだろう…たまに見せる、三蔵のその瞳の色を俺は…ずっと追いかけている…。





 八戒が珈琲を淹れる背中をぼんやりと眺めていた。
 こうして旅に出るまでは、その背中はずっと俺だけの物だったのに……。

 小さな村の湯治者向けの宿舎。ちゃんとした宿をとることは出来ず、俺たちは野宿よりはましだから、とそこへの宿泊を決め、八戒の手料理での夕飯を終えたところだった。
「八戒、珈琲」
 三蔵がさも当たり前のように言い、八戒もそれへ当たり前のようにキッチンへと立つ。

 今、言うぞ…今……。
 八戒はそれが当たり前とでも言うように人数分の珈琲を淹れると、俺の方を見て言った。
「悟浄も珈琲、飲みますよね?」
 一応、問いの形を作っているけど、それはあくまで確認のため。断られるとは思ってもいないその笑顔に俺は言った。
「いんや、いらねぇ…」
 俺は立ち上がって、与えられた部屋へと向かった。
「悟浄……?」
 どこか寂しげな困ったような八戒の声を無視した。

 部屋は…殺風景で、小さなベッドが二つあるだけのツインルーム。
 持ち主の性格を表すように、綺麗に並べられた荷物の置いてあるベッドを横目に、自分に与えられたベッドに身体を投げ出すようにして転がった。
 横になったまま、煙草に火をつける。
 自分でも大人げないと思う。
 けど、気がつくと俺はいつも、誰かのついで、という扱われ方をしているような気がして…あいつは俺のこと、どう思ってるんだろう、って不安になる。
 あいつを拾って…一緒に住むようになって……いつしかお互いに相手を特別な存在だと思うようになって……。
 でも、あいつにとって俺は…特別な存在ではなかったんじゃないかって…。俺にとっては、いつでも特別な存在だったのに……。

 三蔵が珈琲を頼めば「悟浄“も”飲みますよね?」、悟空は何か食い物をねだれば「悟浄“も”食べますよね?」
 必ずついて来る、「も」という一文字。俺“が”どうしたい、とか、俺“に”どうして欲しい、とか…そんな言葉は旅に出てから聞かなくなったような気がする。
 八戒の中での俺の位置は一体どこにあるんだろう…。

「悟浄?」
 部屋に入ってくる八戒の気配を無視して俺は目を閉じた。
「大丈夫ですか、悟浄…?」
 傍に寄って来る気配。ひんやりと冷たい八戒の手が俺の額にあてられる。
「…熱があるわけじゃないみたいですね…」
 少し安心したような声。
 俺は、離れようとした手首を掴み勢いをつけると、八戒の体をベッドに組み敷いていた。
「悟浄…!」
 驚いたように見開かれる、翡翠の瞳。暴れだしそうな気配に俺は八戒の体の上に馬乗りになってその動きを封じる。
「お前さ…俺と三蔵、どっちが大事なわけ?」
 思いがけず、絞りだすような声になったことに俺自身驚いたが、それは八戒も同じだったのだろう、暴れていたその身体が動くことをやめて、その瞳がまじまじと俺を見つめた。
「…なぜ、そんなことを…?」
 力の抜けたその身体を押さえつけることをやめ、俺は言葉を捜す。けれど、その場にふさわしい言葉はいくら考えても思いつかなかった。
 八戒の目が優しく微笑むように眇められる。そして…俺に乗られたままの動きにくい体勢で腕を伸ばすと俺の身体を抱き締めて…そして笑った。
「僕には誰もが大事ですよ? 三蔵は僕を生かしてくれた人だし、悟空はいつでも僕に元気をくれる…。でもね、悟浄? 貴方は…特別なんです。行くところのなかった僕に、僕の為の居場所を用意してくれた…貴方は…それ以上は言わなくても…わかってくれているんじゃないんですか?」
 さらにくすくすと笑う八戒は、俺の額に軽く口付けを落としてポツリと呟いた。
「嫉妬してくれるなんて…嬉しいですよ、悟浄…」

 それが嫉妬だったのかなんなのか…その夜、俺は八戒を思う様抱き…そして、ついでのように扱われても、二人きりになれば二人で過ごしていたあの頃のように恋人でいられるのだと知った。





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