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くれないづきの見る夢は 紅い涙を流すこと 透明な血を流すこと 孤独にのまれず生きること
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 静かにJAZZの流れるバー。
 そのカウンターの一番奥の席で、火の点いた煙草を右手の人差し指と中指に挟んだまま、ジンのロックを舐めるように飲んでいる男が一人。
 モノトーンの落ち着いた店内でその男の辺りだけが鮮やかな紅で、目を引く。
 悟浄、だ。
 いつも回りにアクセサリーのように侍らせる女性の姿もなく、旅の連れの姿もない。一人、だった。
 街に入って宿に着くとすぐに、悟浄は一人で出かけた。この日だけは、誰もこの単独行動に文句を言わない。
 同じような日が、三蔵にも八戒にもある。一年のうちでたった三日。それぞれが、自分の内に篭る日があるだけのこと。
 けれど、悟浄はこの日にどんな思いを抱いていいのか、わからない。
 三蔵も八戒も、大事な人を失った日だと、その相手を悼むことができる。
 自分には、それが、ない。アノヒトの死を悼むほどの優しい記憶は…どこを探しても見つからない。
 自信に満ちて光り輝いているような陽気な瞳も、今は陰鬱な色に沈んでいる。
いつもはすべてを面白がるように上がっている口角も、少し下がり気味でなんの感情も浮かんでいない。

「二度目の…誕生日…か…」

 右手にグラスと煙草を持ったまま、肘をついた左手の指で、そっと消えぬ傷をなぞる。
 舌が焼けるような強い酒の味に表情を歪める。
 自分で言った一言に、嫌気が差しただけ、なのかもしれない。
 死に損なった、それだけの日。それ以上でもそれ以下でも、ない。
 それでも、この日になると、一人でいるのが苦しかった。だからいつも、子供の頃欲しくて欲しくてたまらなかった何かを求めるように、愛を、温もりを求めるように、街を彷徨っていた。
 それが変ったのは、仲間と呼べる彼らに出会ってから。愛でも温もりでもないが、自分がいてもいい場所を見つけてから。
 そしてこの日、悟浄は一人で静かに過ごすことを選ぶようになった。



 店の中に流れているJAZZが、止まる。
 実際は止まったわけではなかった。その店の雰囲気を壊すような一団が、入って来たのだ。
 カウンターの中の初老のマスターが嫌な顔をする。

「相変わらず、シケてんなぁ、この店は…」
「お、珍しく、客がいんじゃんよ。女かぁ?」

 男たちの声が耳障りだ。悟浄は睨みつけるように、顔を上げた。

「なぁ~んだ、野郎かよ~~。随分と派手なナリしてんじゃん、兄ちゃん」

 男の一人が馴れ馴れしく肩に手を置く。
 その手を一瞥すると、悟浄はそれを振り払った。

「…煩ぇ…俺は静かに飲みてぇんだ。どっか行きやがれ、群れなきゃなんも出来ねぇガキが…」

 吐き捨てるように呟かれる言葉に、男たちは敏感に反応した。口々に怒声に罵声を上げる。

「なぁ、おっさん。こいつら、街の顔役とかと繋がってねぇ、よな? 店の中、壊したらすまねぇ」

 グラスを静かにカウンターに置きながら男たちにゆっくりと視線を向けながら言う。

「売られた喧嘩は高価買取、よ?」

 その情況を面白がるように、悟浄の口角が上がった。
 悟浄がスツールから立ち上がるのを待たず、男の一人が殴りかかって来た。
火の点いた煙草を持ったままの手を前に突き出し、男の顔でその火を消すと、スツールから身体を滑らせてしゃがみ込み、拳をかわす。
 勢いのついた男の拳は、身体の動きに一瞬遅れて残った悟浄の髪を掠め、そのまま男は壁に激突して顔を押さえて蹲った。

「野郎っ!」
「このっ!!」

 男の一人がしゃがんだ悟浄目掛けて蹴りを放つ。床に据え付けられたスツールの足を掴み軸にして身体を回転させた悟浄はそれをかわし、身体を広い店内に滑り出させて蹴り上げた足をその隣の男の鳩尾にヒットさせた。
 残りは三人。
 体勢を立て直そうとしたところで、そいつらに殴られるが、悟浄には大して効いてないようだった。

「全然、効かねぇなぁ…」

 口の中が切れたのか錆の味が口の中に広がる。その血だか唾液だかわからないものを吐き出すと、悟浄は不敵に笑って見せた。
 喧嘩には慣れてる。痛みにも…。ずっとアノヒトに殴られて育ったし、一人になって暫くは、殴られることの方が多かった。死ななかったのが不思議なくらいに。
 そうして体得した喧嘩の術はすっかり自分の一部だったし、旅に出て命のやりとりを続けるうちにどんどんと研ぎ澄まされてきていた。
 何発か拳が当たった事で気を良くしたらしい男が更に悟浄に殴りかかる。
それを紙一重でかわして鳩尾にパンチを一発。そのまま、隣の男に、頭突きをかます。
 残った一人が恐怖の表情を浮かべる。

「やっぱ、一人だと怖ぇんじゃん。仲間連れて出てけよ」

 にんまりと笑って撤退を促すが、男は急にキレたかのように、飛びかかって来た。その手にナイフを持って。
 それを間一髪でかわすが、ナイフの切っ先が頬の傷の上を掠める。
 つぅ、と落ちる血に、あの死に損なった日を思い出す。

「くっ…」

 これは、痛み、じゃない。怖れ、でもない。苦しみ…悲しみ…そして、すべてを諦めていた自分…。
 くい、と袖でその血を拭う。今は、諦めたりしない。それだけの強さが、自分には、ある。
 身を翻して、上着を脱ぐ。更にナイフで切りかかってくるのを片手に持った上着で巻き取るようにして、叩き落とした。そのまま、反対の手を拳にして顔面を目掛けて殴りかかり、目の前ですん止めにする。
 男はその場にへたり込んだ。
 最初に伸した男がもぞもぞと起き上がり、最後まで残った男と二人、倒れた仲間を連れて、ほうほうの体で店を出て行った。
 脱いでいた上着に腕を通すと、背の部分が大きく切られていた。
 悟浄はそれを見てため息を吐く。

「おっさん、騒がせたな…」

 元のスツールに戻って、煙草に火を点ける。
 マスターが悟浄の傍に来て、蒸しタオルを差し出した。

「これで、傷を…。強いですねぇ、お客さん…」

 言われるまま、切られた頬を中心にいくつか出来た傷をざっと拭きながら、いやそうでもねぇぞ、と言葉を濁して笑う。
 聞くと男たちはこの辺りのチンピラで、街の鼻摘み者だったらしい。
いやぁ、スカッとしました、とマスターは屈託なく笑っていた。
 残っていた酒を一気に煽る。
 お代はいいです、いいものを見せてもらいましたから。というマスターの言葉に甘え、悟浄はその店を後にした。


 切られた上着を見て小言を言うだろう八戒を思い浮かべて苦笑しながら、宿に、仲間の元に帰るために。



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 ふっ、と空を見上げる。
 雪がちらちらと降っていた。

 ホワイトクリスマス…そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

 あったかい家、家族との会話。ケーキ、プレゼント…。

 きっと、あそこの家でもここの家でも…温かそうな灯りの下で、子供たちの笑い声。

 羨ましい、なんて思ったことはない。
 いや、ずっといつも…クリスマスだけじゃなくて、普通の毎日ですら羨ましかったから、そこだけを取って羨ましい、とは思えないだけだろう。

 俺は花屋で働いていた。
 近所の優しいおっさんが、俺の身の上を気の毒がって、家から逃れる場所に、と雇ってくれたのだ。
 ガキの俺に出来ることなんか知れてるけど、それでも、まともに働くこともしない…出来ないかあさんの代わりに兄貴と俺で働いている。
 今日は給料日だった。

 かき入れ時のクリスマス、すっかり遅くなってしまった。
 他に帰る場所のない俺は、とぼとぼと帰路につく。
 ポケットには少しばかりの給金。腕には…今夜売れ残った、ポインセチア。
 おっさんは優しいけど、俺のこの髪と瞳の色を嫌っているかあさんに、この鉢をプレゼントだって持たせてくれたのは…まぁ、おっさんにはわからないことだから、俺は素直にそれを持って帰った。

 また、殴られる…そう思った。

 かあさんは、いなかった。
 真っ暗で火の気のない、寒い家に帰りついて…それがサンタのプレゼントなんだと思った。
 殴られずにすんだ、この一日が…。






 ふっと、空を見上げる。
 雪がちらついていた。

 ホワイトクリスマス…そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
 温かそうな灯りの下ではきっと、子供たちの嬉しそうな声が聞こえてるんだろう。

 花屋の店先にポインセチアの鉢があるのを見つける。

 そ~いえば、あの鉢植えってど~したんだっけ?

 昔々の記憶が甦る。

「欲しいんですか? 悟浄?」

 いんや、別に……ぼそっと言うのが聞こえなかったらしく、八戒はその鉢を求めて、俺に押し付けてきた。

「貴方の髪と同じ色ですね」

 優しく笑う八戒。 
 あの人から一番欲しかったプレゼントは、きっと、こんな優しい笑顔。

 咥えたタバコの煙が雪に溶ける。

 今夜は、クリスマスパーティって名前の鍋パーティだ。
 八戒の手にはたくさん食う悟空のためにありえないほどの食料。俺の手には大きなケーキとポインセチア。

 もうすぐ、苦虫を噛み潰したような顔の三蔵と、万年欠食児童の悟空も来るだろう。

 こいつらとつるんで初めてのクリスマス。
 初めて、家族を持った、という気がした。


 メリークリスマス。
 聖なる夜に見る夢は…こいつらとのバカ騒ぎの続きのような夢であってほしい。







「うわっ!!」

 目に焼けるような痛み。
 襲ってきた妖怪が撒き散らした毒の粉をまともに被っちまったらしい。

「悟浄っ!」

 背後から八戒の悲鳴めいた声が聞こえる。
 そう、風下のいた俺ら。
 その一番妖怪に近い位置にいた俺は錫杖を振り回すことでその毒を散らせたが、その一部が飛ばしきれず、俺の目の中に入ったのだ。

 痛みで目が開けられない。
 その場は気配だけで戦うが、仲間の位置の確認も出来ず、鎖鎌は使えなかった。

「悟浄」

 優しく声をかけられ、肩に手を置かれて戦いがすんだ事を知る。

「大丈夫、ですか?」

 言われて痛む目を無理矢理開けると…何も見えなかった。


 痛みは程なく引いたが、自分の手すら見えねぇ。
 本当の闇とはこういうことを言うんだろうか…。
 星一つの光りですら明るいのだと、思った。


 八戒の気孔じゃどうにもならず、近くの町の医者の所に担ぎ込まれる。
 三日も経てば毒も消え、目も見えるようになるだろう、との診断だった。


 宿に着いて、タバコを吸おうと手探りで出したケース。
 一本手に取りかけて、落とすともう、探せねぇ。
 新しいのを出そうと思って探るが、ケースの中はもう空っぽだった。

「ちっ」

 舌打ちをして空のケースを握り潰す。
 三日もこの不自由さを味わうのか…。

 急に右手を掴まれる。
 持たされたのはタバコ、だった。
 吸ってみると、ハイライトの味。
 火が点いてる。
 三蔵か…苦手な味だつってたのに、ご丁寧に火まで点けてくれたのかよ…。

「サンキュ、三蔵」
「………ふんっ。面倒臭ぇから早く治しやがれ」

 あ~、はいはい、その一言は忘れねぇのね。
 つか、これって…三蔵と間接キスかよ…。
 ま、いっか。
 せいぜい、面倒臭ぇ俺の世話、焼いてもらいましょ。
 

 眠れと言われてベッドに入り目を閉じるが、これじゃ、目を瞑っていても開いていてもかわりゃしねぇ。
 余計に神経が研ぎ澄まされる。
 同室になった八戒がたまに俺の方を心配そうに伺っているらしい気配。
 隣室の三蔵と悟空も今日はやけに静かだ。
 それでも、そんな物音を聞きながら、俺は徐々に眠りへと吸い込まれる。
 自分の心臓の音が…大きく聞こえ、それがすべてになって、眠りに落ちた。

 

 三日待つ、という三蔵や八戒に反対して、俺は出立を促した。
 何もしねぇで同じ所に留まっているのは、耐えられなかった。
 せめて、風を感じたい。
 それに、どっかに留まろうと進もうと、襲われる時は襲われる。
 だったら、一箇所に留まるよりは、進んだほうがいいだろう。
 俺の言い分にしぶしぶと言った体で納得したらしい二人は、出立を決め、俺らはまた旅の空を進む。


 冬が近い冷たい風に吹かれて進む。
 目が見えなくなって…風に匂いがあることを改めて知った気がする。
 休憩する、停まった場所からそう遠くない場所で川のせせらぎを聞いた。
 悟空がその野生動物並みの鼻で水を見つけたのとほぼ同時だったのには笑ったが。


 俺が手を伸ばすと、八戒がカップを持たせてくれる。
 タバコを咥えると、三蔵が火を点けてくれる。
 悟空までが、俺の取り皿に料理を取ってくれ、箸を持たせてくれた。


 世界には、色んな匂い、音があるんだと、知った。
 仲間の気遣いが嬉しかった。


 Dialogue In The Dark
 暗闇の中での対話。
 誰かと、自然と対話をする、というエンターテイメントがあるらしい。


 暗闇はずっと怖いと思っていた。
 俺らは…俺は、いつも月の明かりを頼りに闇を歩いてきた。
 けど、それさえもなくした時、闇は思っていたよりも温かいと思った。



 医者の見立て通り、三日後、俺の眼は光りを取り戻した。
 光りのある世界は眩しくて…仲間の顔を再び見られた事にホッとして…それでも、流れた涙は、眩しいせいだと、俺は言い張った。






 宿の自室に大してねぇ荷物を置く。

 久しぶりに大きな街だった。
 夜遅くに到着して、宿を決めて飯食って…それぞれが割り当てられた部屋に引っ込んだ。

 シャワーを浴びて二日ほど続いた野宿の汚れを落とすと、俺はでかける準備をする。
 こういう大きな街の賭場は実入りがいい。
 三蔵の持ってるカードが使えねぇような小さな村に到着した時のために、大きな街に入ると遊びじゃなく賭場に出掛けるのは、俺の仕事みてぇなもんだ。

 出掛けようとすると、ノックの音がする。
 上着を羽織りながら声をかけると、八戒だった。

「ん? なんだ?」
「出掛けるんですね?」

 そう言う八戒もどこかへ出掛けるかのような恰好だった。

「ああ…。稼いどいたほうがいいんだろ?」
「僕も行きますよ」

 そりゃ、俺よりも賭け事には強い八戒だ、一緒に行けば実入りもさらにいいだろう。
 けど、宿に泊まれる日には、こいつには色々とすることがあるはずだった。
 そうでなくても、毎日運転で疲れも溜まっているはずだ、俺につきあって出掛けるぐれぇなら休んでほしいと思う。

「何? 俺の腕が信じらんねぇの?」
「そうじゃありませんよ。ただ…」

 歯切れの悪い物言いに俺は首を傾げる。
 なんだってんだ?

「今日は、悟浄、誕生日じゃないですか」

 誕生日?
 すっかり忘れてた。
 好む好まざるに関わらず…俺がこの世に存在を始めた日…。
 めでたいなんざ、思ったことはねぇ。
 喜びも悲しみも…23年前のこの日から始まった。
 喜びなんざ、数えるほどしか経験したことねぇし…ガキの頃は祝ってもらった記憶なんざねぇ。
 顔も覚えてねぇ、俺を置いてさっさと死んじまった両親は、それでも、俺が生まれたことを喜んでくれたのだろうか?
 俺が生まれさえしなけりゃ、アノヒト達は死ななかった…死なずにすんだんじゃねぇの?

「それがどうしたっての? んなもん、関係ねぇじゃん」

 前にもこいつには言ったはずだ、誕生日なんざ祝ってくれるな、と…。

 それでも…と、八戒は言う。

「貴方がいなければ、僕は今、ここに存在していませんから」

 この言葉に俺は弱い。
 こいつを気まぐれで拾ってから…俺はこいつのペースに巻き込まれ、結局、こいつの事を大事なんだと認識させられる。

 今日も…

「悟浄、生まれてきてくれて、僕を助けてくれて…ありがとうございます」

 ケーキよりも甘い言葉でこいつは毎年、俺を祝ってくれる。


 ガキの頃に望んでいた親愛の情をもってなされる抱擁は、どんなプレゼントよりも甘くて切なくて…暖かかった。



 二人で賭場に出掛け、大勝ちしたのは、言うまでもねぇよな?







「経文を寄越せ、三蔵っ!」

 なんつ~か、いっつもワンパターンな登場の仕方。
 今日のは…ざっと50人か…。

 悟空は如意棒を片手にジープから飛び出して行く。

 ったく、団体で来たって割引きはねぇ、っつ~の。
 『経文奪還バスツアー』でも組んでんのかね、こいつら…。

 俺も悟空を追うようにしてジープから飛び降りた。
 連中の真ん中に飛び込みながら右手を伸ばし、錫月杖を取りだす。
 あの寺も、変な宝物を封印してたもんだぜ…。

 いつの頃からか…多分この旅を始めるようになってからだろう…しっくりと馴染むようになった俺のこの得物。
 街にいる頃にゃ、こんなもん、必要なかったからな。
 自分の手足が武器だった。
 それで十分だったし、相手を殴る時に感じる痛み、蹴り飛ばす時に感じる衝撃に、自分が生きているんだと思い、自分が誰かを傷つけているんだと意識することが出来た。
 相手が妖怪とは言え、俺らの邪魔をするやつらとは言え、殺すことを厭わなくなってる自分が怖ぇと思う。

 悟空はあいつ自身の得物と同じぐれぇ、まっすぐだ。
 自分の…いや、三蔵の邪魔をするものは、悪だと割り切ってる。

 あれくれぇ、俺もまっすぐになれりゃ、楽なんだろうけどな。
 まぁ、自在に曲がる鎖を秘めたこの得物と同じぐらい、屈折してんのかもな…。

 三蔵の銃。昇霊銃だと言う。けど、少なくとも弾はどこにでもあるもんだし…銃自体にも特に何かがあるわけでもなさそうだ。
 自分をいつでもゲームオーバーに出来るために手にした銃だと聞いた事がある。
 だとしたら、ただの銃かもしれねぇ…。
 撃ち出される弾は…あいつの念とやらが込められてるんだろうな。
 大量に撃たせたくねぇと思う。
 もう、自分を殺そうとは思ってねぇとは思うけど…命を削ってるように見える、そんな戦い方をする三蔵。

 八戒の戦いは、基本、体術、な筈だ。
 いつの間に憶えたのか…気孔、なんつ~の。
 気がついたら出来てた、って…何者なんだか…。
 これも…自分の命を削って使う業だと思う。
 他人の怪我を治したり、シールドを張ったり、と重宝はするんだが、その後の八戒の疲れ具合を見るのはどうも、忍びねぇ。


「悟浄っ!」

 俺のすぐ横にいた妖怪が八戒の気孔で吹っ飛ばされる。
 三蔵のすぐそばで、いつもペアのように戦う八戒を見つける。
 三蔵が銃弾を装填する時に防御するためだ。

 鎖鎌が戻って来ると俺は悟空に声をかけた。

 三蔵と八戒の傍に戻る。
 敵の人数が減ってくると、俺や悟空に三蔵や八戒の流れ弾や跳弾が当たる可能性があるから、だ。
 三蔵が経文を持っている以上、近づく敵が多いのも事実。あいつの傍にいた方が、効率がいい、ってのもある。

「何、ぼさっとしてやがった」
「戦闘中に、どっかのお嬢さんのことでも思いだしていたんですか? あんな近くに敵がいるのに気付かないなんて…」

 傍に戻るとそんな風に言葉が飛んでくる。
 その言葉にほっとする。
 こいつらが疲れてねぇのがわかるから。

「あ~…悪ぃ」

 何を考えてたのかなんて言わない方がいいだろう…。まぁ、言う気もねぇが…。

 敵はあと、8人。

 悟空の「腹減った~」って一言で、この戦闘は終わる。







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